天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

冠動脈バイパス手術を一度に8箇所行うケースもある

順天堂医院・天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を治療する大きな柱のひとつが「冠動脈バイパス手術」です。虚血性心疾患は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送るための血管=冠動脈が細くなったり詰まってしまうことで起こります。

 そこで、狭くなったり詰まっている血管に対して、他部位の血管を使って迂回路=バイパスをつくり、心筋への十分な血流を確保できるようにするのです。

 バイパスをつくる部分は1カ所とは限りません。冠動脈が何カ所も詰まったり狭窄している患者さんの場合、すべての血管にバイパスをつくり、血流を再開することが理想的といえます。ただ、患者さんの心臓の状態や体力によって、すべての箇所でバイパスをつくることができないケースはたくさんあります。

 当院で行っている冠動脈バイパス手術では、患者さん1人当たり平均3・8カ所のバイパスをつくっています。これまで、最も多くつくったバイパスは8カ所で、年間に1人か2人はそうした患者さんの手術を行っています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。