バイパスをつくる処置そのものは、1カ所であれば10分程度です。トータルの手術時間は使う血管の準備も含めて4時間くらいで終わります。これが8カ所になるとその分以上に時間が加算され、トータルで6時間ほどになります。バイパスをつくる箇所が増えれば、単純にそれだけ手術時間が長くなるのです。
また、バイパスを8カ所つくる場合、バイパスとして使う血管(グラフト)を少なくとも2~3本、場合によっては4本採取しなければなりません。血管が詰まったり狭窄している部分の程度によっては、グラフトの長さが足りなくなるケースもあります。そうした場合、別のところから血管を採取して血管同士を縫い合わせ、継ぎ足してグラフトにする処置が必要です。それだけ、やるべき作業が増えることになります。
心臓手術は、手術時間が長くなれば長くなるほど患者さんの負担が大きくなります。バイパスをつくる箇所が増えれば、その分だけ患者さんに負担がかかるのです。なるべく早く正確に手術を終わらせなければならないので、外科医の技量も求められます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」