鼻詰まりが続く、年中鼻水が出ている、といった人は、慢性副鼻腔炎かもしれない。
「急に症状が強く出る急性疾患に対しては『これはおかしい』と感じやすい。一方、症状が慢性的に続く慢性疾患は患者さんも慣れてしまい、治療が必要なタイミングを見逃しがちです」
こう指摘するのは、「鼻のクリニック東京」の川野健二院長。川野院長自身、重いアレルギー性鼻炎を抱えていたが、治療で生活の快適度が一気に上がったという。
★薬では治らない慢性副鼻腔炎がある
慢性副鼻腔炎は、大きく2つに分けられる。かつて蓄膿症と呼ばれていた風邪などの感染症をきっかけに発症する「従来型(慢性化膿性副鼻腔炎)」、そして白血球の一種である好酸球が原因不明で活性化し副鼻腔に集まって症状が出る「好酸球性副鼻腔炎」だ。
「好酸球性副鼻腔炎は完治が困難。薬だけでは効果が不十分で、内視鏡手術が必要です」
従来型であれば、大半は薬で治る。ただし、こじれるケースもあり、その場合はやはり手術が必要となる。
★原因・程度によって治療は異なる
従来型か、好酸球性副鼻腔炎か。または好酸球性副鼻腔炎が先にあり、二次的に従来型を合併しているのか。鼻詰まりで来院した患者の中にもさまざまなケースがあり、最初の診察での的確な見極めが重要だ。
「従来型はマクロライド系抗菌薬が有効。しかし、好酸球性副鼻腔炎ならステロイドでないと効きません。また、従来型も急性なら1週間の抗菌薬で治りますが、症状が消えたからと薬を早い段階でやめたために、菌が根絶されないまま慢性化してしまうケースもある」
慢性副鼻腔炎は「死ぬ病気」ではないため、専門医以外の診断を何となく受けている人が少なくない。それが、「本来は薬で治ったのに手術が必要」「もっと早くにつらさから解放できた」といった結果を招く。
★レントゲンだけでは不十分
開業医では、レントゲンだけで診断することがままある。ところが、それが副鼻腔炎の誤診を招くことも……。
「レントゲンで粘膜が腫れている様子は確認できますが、膿の状態などはわかりません。慢性副鼻腔炎と別の医療機関で診断された患者さんの中には、そもそも慢性副鼻腔炎ではない人、従来型と好酸球性副鼻腔炎の鑑別診断ができていない人などが珍しくありません」
理想的なのは、治療の前後でCTを撮る。副鼻腔の膿の状態(菌の状態)を確認できるからだ。治療前のCTと比較して膿の状態が改善されていなければ、治療がふさわしいものでなかったか、不十分だったかだ。
改めて、正しい治療を行うことができる。
★手術を繰り返す場合も
好酸球性副鼻腔炎のケースだ。
「当院では、好酸球性副鼻腔炎の患者さんには、軽症例を除き、手術前にステロイド内服で鼻ポリープ(鼻粘膜の一部が腫れて垂れ下がったもの。鼻茸ともいう)を縮小し、手術で鼻ポリープを切除。その後もステロイドの点鼻薬や内服薬でうまくコントロールしていきます」
しかし、ずっといい状態が続かない患者は結構いる。
「悪化程度によっては手術を何度か検討してもらい、患者さんのQOL(生活の質)を上げるようにしています」
患者の負担を少しでも軽くするため、同クリニックでは日帰り手術を実施している。
たかが鼻、ではないのだ。