老人の「食べる幸せ」を守る 家族がすべき4つのチェック

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高齢の親が食べられなくなった時、その原因はさまざまだ。NPO法人「口から食べる幸せを守る会」の小山珠美理事長に聞いた。

 現在の医療では「食べられなくなった理由」をきちんと探り、対処されるケースはまれ。小山氏は看護師としていち早く「口から食べることの重要性」に着目し、全国各地で講演会や指導を行っている。「食べること」に関心を持つ人が医療や福祉従事者の中に徐々に増えてきているというが、「全体で見れば、まだまだ軽視されている」と話す。

 老親の「食べる幸せ」を守るには、家族が立ち上がるしかない。何をチェックすべきか? 小山氏によれば、口から食べられなくなった理由には、大きく分けて4つの観点がある。


■心や体はどうか?

 一人暮らしで作る食事はわびしく食べる気がしない――。このような状態であれば、食べる意欲が湧かず、低栄養を招く。冷蔵庫に作り置き食品を置いても、「食べる意欲」を上げる対策でなければ状況は変わらない。

 また、脳、神経系、血液、内臓系などに病気があったり、呼吸器に問題があったら、食が細くなって当然。検査を受けたら、何らかの病気が見つかるかもしれない。

「肺炎で搬送された患者さんの口の中を見ると、口腔環境が非常に悪く、汚染、虫歯、歯周病、不適合義歯などの方が多い。食欲がなくなる上に、菌の繁殖を招き、肺炎を引き起こします」


■食べるために必要な機能はどうか?

 脳障害や認知症などで、「咀嚼」「舌にのった食物を喉の奥に送る」「のみ込む」といった機能が衰えれば、食事が困難になり、栄養状態が不良となる。

「嚥下(ごっくんというのみ込み)の機能だけをみるのではなく、トータルの視点をもった正しい食事介助が必要」


■姿勢や活動量はどうか?

 要介護で食事介助を受けている場合、特にチェックすべき。あごが上がっていたり、顔が横を向いていたり、過度に前傾姿勢だったりすると、健康な人でものみ込みづらい。食事介助をする人のスプーンを運ぶタイミングが遅かったり速すぎたりすると、やはりのみ込みづらい。

「活動量が少なければ、お腹がすきませんから、食べたがらない。姿勢調整と活動は安全に食べるための必須条件です」


■食べやすい形態などになっているか?

「食べる力が衰えた人の食事は、細かく刻んだり、とろみをつけたりすればいいと誤って認識されている。舌の上で食物をまとめる力が落ちている人が、細かく刻んだ食物を食べるのは困難で、誤嚥しやすくなる。個別に応じた食物形態の調整が必要です」

 小山氏は4つの観点から総合的に評価し、「なぜうまく食べられないのか?」「では、どうすればよいのか?」を判断して指導。8000人以上を口から食べられるようにしてきた。その中には、胃ろうなど人工的な栄養補助を勧められた人も多く含んでいる。

 ただし、残念ながら口から食べることが非常に困難なケースもある。全身の機能が著しく衰え、栄養状態がかなり悪いケース、自然の老化現象として徐々に食べられなくなっているケース、胃ろうなどの年数が長く適切な食事介助をできる人が身近にいないケースなどだ。

「患者側(家族を含む)が結論を下すしかないが、医療関係者と積極的なコミュニケーションをとった上で、『食べる幸せ』を簡単に諦めないでほしい」

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