決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

都立病院は本業で年間にいくら儲かっているのか?

常に苦しい台所事情
常に苦しい台所事情(C)日刊ゲンダイ

 都立病院は本業だけでは立ち行かず、240億円の医業外収入(大半が都と国の負担金・補助金等)で持ちこたえています。今回は本業の収益を細かく見ていきましょう。〈表〉は過去3年間の医業収益と医業費用の項目別金額をまとめたものです。まず収益ですが、増えているのは外来収益で、入院収益はほとんど増えていません。言うまでもなく患者単価は入院のほうが高いのですが、都立8病院のベッド稼働率は82%前後という低空飛行で、重装備の病院にとってはかなり苦しい数字です。入院で稼げない分を外来で補っている様子が推測されます。

「一般会計負担金」とは、周産期医療・小児医療・離島医療などの充実のために東京都から注入されている資金です。これも補助金と見なせば、都立病院に注入されている税金は毎年440億円以上になります。また表には載っていませんが、2015年には都の一般会計から50億円の資本注入がされています。

■職員の収入は民間病院より高め

 費用で目につくのは「給与費」(人件費)です。医業収益に対する人件費の割合は50%前後が適正といわれています。しかし都立病院のそれは、55・5%前後で推移しています。実は都立病院の医師給与は、むしろ低めに設定されています。しかしその他の職員(技師、看護師、事務など)は民間病院よりも高めです。しかも地方公務員ですから、年齢に応じて上がっていきます。

「材料費」もジワジワと増えています。医薬品、消耗品、給食材料費などの合計です。医薬品などは、使った分だけ健康保険で償還されると思っている人も多いと思います。しかしいまでは多くの病院が、入院医療費の包括払いに移行しています。病気の種類と治療内容によって、入院1日当たりいくらと決められています。入院中の検査や投薬はすべてその金額の中でやりくりするようになっているのです。医薬品や消耗品の価格が上がれば、それが直接響いてくるわけです。

 経費も増え続けています。こちらは「各種委託費」(血液検査・清掃・消毒・シーツ交換など)が中心です。これも首都圏の物価が上昇すれば、増えるのは当然です。

 都立病院の赤字体質が改善される見込みは、かなり薄いと言っていいでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。