運動や食事制限でムリなら 痛風発作「薬で予防」も選択肢

まずは節制を心がけたい
まずは節制を心がけたい(C)日刊ゲンダイ

「風が吹いても痛い」といわれる痛風発作。体内の尿酸が結晶化して起こる一種の関節痛で、その予備群となる高尿酸血症の患者数は成人の20%を超える。尿路結石も合併しやすい高尿酸血症は血液検査で尿酸値を調べれば簡単にわかるため、警戒している人も多いはずだ。

 食事や運動に気を使って尿酸値を減らせば予防できるが、一度身についた生活習慣を改めるのは難しい。そこで薬の登場となるのだが、いつから飲めばいいのだろうか? 腎臓病専門医で痛風治療にも詳しい「松尾内科クリニック」(東京・桜新町)の松尾孝俊院長に聞いた。

■再発予防は6.0㎎/デシリットル以下を目指す

「痛風発作があれば当然、薬物治療を行いますが、問題は痛風発作が起きていない無症候性高尿酸血症のケースです。尿路結石を含む腎障害や心血管障害のリスクが高まる、高血圧や虚血性心疾患、糖尿病、メタボがある場合は、尿酸値8.0㎎/デシリットルでの薬物治療が推奨されています」

 その根拠となるのは大規模臨床試験の結果だ。

「健康な人を対象にした米国の研究では、尿酸値6.0㎎/デシリットル未満で尿酸関節炎の5年間累積発症数は0.5%、6.0~6.9㎎/デシリットルで0.6%、7.0~7.9㎎/デシリットルで2%、8.0~8.9㎎/デシリットルで4.1%、9.0~9.9㎎/デシリットルで19.8%、10.0㎎/デシリットル以上で30.5%でした」

 同様の報告は台湾でもあり、7.0~7.9㎎/デシリットルでは10.8%、8.0~8.9㎎/デシリットルでは27.7%、9.0㎎/デシリットル以上では61.1%だった。

「米国と台湾の研究結果の差は人種差があるのかもしれません。痛風発作は尿酸値が高いときだけでなく、急激に変動したときにも起こるため発作を完全に予測するのは難しい。ただ、尿酸値と痛風発作の関係性が高いことから目安になるのです」

 ちなみに一度、痛風発作を起こした人は尿酸値が7.0㎎/デシリットル以下でも再発作の可能性があり、6.0㎎/デシリットル以下に抑えるのが望ましいという。

■タイプによって異なる薬の選び方

 では、尿酸値が高い人はどういう薬を飲めばいいのか? 高尿酸血症には大きく3つのタイプがあって「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」に大別される。当然、薬の選択はタイプによって違ってくる。

「健康な人は通常、1200㎎/デシリットルの尿酸が体内に蓄えられていて、うち700㎎/デシリットルが毎日入れ替わります。500㎎/デシリットルが尿として、200㎎/デシリットルが汗として排泄されるのです。尿酸は2割が飲食物として摂取され、8割が体内で生成されるといわれますが、具体的にその患者さんの尿酸生産量は尿酸クリアランス量によって推測します」

 尿酸クリアランスとは血中の尿酸がおしっこの中にどれだけ排泄されるかを調べたもの。検査は病院で水を500㏄飲んで排尿、その1時間後に再び排尿してその量を調べるというもの。

「薬は、尿酸産生抑制薬としてザイロリックやアロシトール、フェブリクなど、尿酸排出促進薬としてユリノームやベネシット錠などがあります。さらに、尿中の尿酸を溶けやすくして尿路結石を予防する薬であるウラリットも使われます。これらは尿酸値を下げる薬であって、痛風発作の痛みを抑え、腫れを取る作用はありません。あくまでも痛風発作を予防し、腎臓を守るための薬です」

 勘違いしてはいけないのは、尿酸自体が体の細胞をサビさせる活性酸素を抑え、血管拡張作用があるなど、アンチエイジング作用が指摘されていること。そのため、やみくもに下げれば良いということでもない。

「尿酸値が高いと腎臓病や高血圧、心臓病などが多いという報告もされています。それならば、尿酸値は低ければ低いほど良いと思われるかもしれません。しかし、今年に出されたブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという医学雑誌には、過去に出された研究を解析したところ、『痛風と尿路結石以外の病気については、尿酸値を下げることによる治療効果は確認されなかった』と報告されています。症状がない人で、尿路結石や腎臓障害、糖尿病や高血圧のない人は薬は9.0㎎/デシリットルからでもよいのではないか、と思います」

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