天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

患者が改めて教えてくれたエビデンスに基づく手術の重要性

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 1997年、冠動脈バイパス手術の症例数が350例を超え、日本一になりました。それから20年がたち、心臓疾患の治療は大きく変わりました。

 画像診断機器や人工弁、人工血管といった手術で使う機材はもちろん、治療薬も劇的によくなっていますし、TAVIをはじめとしたカテーテルなどの内科的治療も格段に進歩しています。20年前に手術を行った患者さんも、そうした治療の進歩の流れにうまくマッチできている方は、いまも大きな問題はなく、元気に過ごされています。

 ただ、そうした流れに乗ることができた患者さんは、振り返ってみると、その時点で「よかった手術」を行っている場合がほとんどです。一方、当時「どうなんだろうか?」と考えさせられるような手術を行った患者さんは、治療の“賞味期限”がきて、再び具合が悪くなったり、大がかりな再手術が必要になるケースが散見されます。

1 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。