2003年冷夏も急増 “第二の梅雨明け後”の熱中症に要注意

夏が中断し、暑さに慣れる期間が失われると熱中症が増加
夏が中断し、暑さに慣れる期間が失われると熱中症が増加(C)日刊ゲンダイ

 東京では8月に入り、21日連続の雨を記録した。「酷暑の8月」との気象庁の3カ月予報ははずれ、21日までで最高気温が30度を超えたのは10日間。これは昨年の半分だ。その一方で17日に発表された気象庁の1カ月予報によると8月19日以降は例年並みか、それ以上の気温になる確率が70~80%だという。そこで心配になるのが熱中症だ。

「一般的に気温は6月ごろから徐々に上昇し、7月末から8月はじめに気温のピークを迎え、その後徐々に低下していきます。この場合、熱中症の患者数も落ち着きます。しかし、今年のように8月はじめまでは例年並みに気温が上昇しながら、その後に急落、再び気温が上昇すると、気温上昇後に予想以上に多くの熱中症患者が出る可能性があります」

 こう言うのはサラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・江戸川区)の林雅之院長だ。

 その良い例が記録的な冷夏といわれた2003年だ。東京の7、8月で最高気温が30度を超えた期間は3回あった。7月中旬と7月終わりから8月中旬、それと8月下旬だ。前2回の熱中症による搬送者数は1日20人程度だったが、3回目はその倍以上の50人近くに増えた。3回目の最高気温は35度にも達していなかったのに、だ。

「熱中症は比較的低い気温が続いた後、急激に気温が上がった後は、気温自体がそれほど高くなくても多発する傾向があります。梅雨の最中でも梅雨明け後でも最初の熱波(人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温を取り入れた指標WBGT28度以上が数日続いた状態)後に熱中症患者が急増するのと同じです」(林院長)

■冷夏で暑熱順化が劣化する?

 一般的な夏なら、その後も高い気温が維持されるため、人は体内に熱がこもらないよう、汗をかいて温度調節できる体になっていく。これが「暑熱順化」だ。その結果、気温は高止まりしても熱中症患者数は減る。

「ところが、今年のように8月中旬以降に気温が低い日が続くと、せっかく8月はじめに完成した暑熱順化の効果が少しずつ減少してしまう恐れがあるのです」(林院長)

 一般的に暑熱順化は暑くなり始めて3~5日で変化が出て、2週間ほどで完成する。一方、暑さが和らぎ、暑熱の負荷が止まると、そこから1~2週間で効果が減少し、3週間で完全に消失するといわれている。

 今年の東京の8月の気温は37.1度を記録した9日をピークに低下、それ以降21日までは30度を超えた日は4日。例年、同時期の最高気温の平均が30度以上であることを考えれば涼しい日が続いているといえる。

「今年は冷夏などといわれますが、東京を含め全国的には8月21日までの3カ月間は例年よりも気温は高めです。ただ、8月中旬の東京に限ってみれば低温ということになります」(気象庁)

 これまで熱中症患者が多くなかったとはいえ、この先、強い日差しが戻って気温が30度を超える日が続けば、今年の8月後半からは「第二の梅雨明け」ともいうべき状況になりかねない。

「熱中症は、体温が上がりやすく下げにくい子供や高齢者がなりやすいことが知られています。とくに高齢者は感覚が鈍っていて暑さを感じなかったり、汗をかけない状態になっていることがあります。また喉の渇きを感じづらいため、水の補給が遅れて脱水症状になりやすい。高血圧や糖尿病、心臓病などの薬の中には、発汗を抑制したり、利尿作用があり、それを飲んでいる人は注意が必要です。太り気味の人も熱をためこみやすいため、気をつけましょう」

 今年は9月の声を聞いても熱中症対策を怠ってはいけない。

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