余命4カ月と言われた私が今も生きているワケ

手術中は痛みで暴れ回り職員に取り押さえられていた

高橋三千綱さん(C)日刊ゲンダイ

 車を運転中、低血糖で呼吸困難に陥り、目の前が真っ暗になったことがあった。明らかに糖尿病の薬の副作用に思えた。

 患者にも百様があって、それぞれの体質や体調によって一律では対応しきれない。しかし、多くの糖尿病専門医がそうであるように、彼らは画一的に数値だけでしか判断ができない。

 そこで何人かの先生に相談したところ、ある先生がこう話した。

「高橋さん、薬はやめましょう。自分の体のことは患者が一番よく知っています。今の世の中、予防が重要だと皆さんが言いますが、病気は悪くなってからジタバタすればいいのです。健康診断をすれば、健康な体であっても、何か病気をつくられてしまいますから」

 がんでない人もがんにされてしまうのだ。

 インスリンは59歳から打っているが、実は注射は苦手だ。ただし、今は痛くない注射針ができている。ナノパス33というのだが、墨田区東向島の町工場のオヤジが開発したものだ。もう80歳を越えられている岡野工業社長の岡野雅行さんは、下町の発明家と呼ばれ、これはもはや針であって針ではない。

1 / 3 ページ

高橋三千綱

高橋三千綱

1948年1月5日、大阪府豊中市生まれ。サンフランシスコ州立大学英語学科、早稲田大学英文科中退。元東京スポーツ記者。74年、「退屈しのぎ」で群像新人文学賞、78年、「九月の空」で芥川賞受賞。近著に「さすらいの皇帝ペンギン」「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」がある。