気鋭の医師 注目の医療

乳酸菌を活用 世界初の経口薬によるHPV標的免疫療法を開発

日本大学医学部付属板橋病院の川名敬主任教授(左写真はイメージ)/(提供写真)

 まずは12~16歳の間に、予防ワクチンを3回接種する。ワクチンは子宮頚がん全体の約70%の原因とされる2種類のHPVに予防効果があるが、すべてのHPV(型)を防げるわけではない。そのため、20歳になったら2年に1回、子宮頚がん検診(粘膜細胞の採取)を受けることが推奨されている。

「欧米の受検率は70%台ですが、日本は20%台と低いのも問題です。ただし、検診はがんを予防できても前がん病変の予防にはなりません。前がん病変が早い段階で見つかっても、その治療法は『子宮頚部円錐切除術』という手術しかありません。この手術をした女性は、将来の妊娠時に早産になるリスクが約3倍高まるのです」

 川名教授がワクチン接種を強く勧めるのはそのためである。一方で、川名教授は長年かけて前がん病変を薬で治す「HPV標的免疫療法」を開発。今年度中に第Ⅰ相、第Ⅱ相の臨床試験を始める予定という。HPVを標的としたがん免疫療法は、これまでも海外で7つほど試験が進められてきたが、どれも実用化に至っていない。しかも、他の研究は注射薬だが、開発したのは経口薬。粘膜免疫を利用した標的免疫療法は世界初だ。

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