気鋭の医師 注目の医療

乳酸菌を活用 世界初の経口薬によるHPV標的免疫療法を開発

日本大学医学部付属板橋病院の川名敬主任教授(左写真はイメージ)/(提供写真)

■ 免疫組織のない生殖器に代わって腸免疫を強化

「大半の人がHPVに感染しますが、がんにならないのは免疫で抑えているからです。免疫の働きが弱いと前がん病変ができるのです。しかし、生殖器には免疫をつける構造がなく、それを担っているのが腸免疫です。だったら腸へ免疫抗原を運んでやればいい。その“運び屋”に用いたのが乳酸菌です。乳酸菌の粉末をカプセルで飲むだけなので、副作用はほとんどありません」

 前がん病変の患者(17人)を対象に1日1回、20日間服用する臨床研究が行われている。その結果では、最も適量の1グラムを服用した10人中8人が手術を回避できるまでに改善。

 うち3人は20日間の服用だけで前がん病変が完治したという。

「免疫療法の有効性には個人差があるでしょう。治験を進めるとともに、今後はどういう人に効果が高いのか予測するコンパニオン診断の方法も考えたいと思います」

▽千葉県出身。1993年東北大学医学部卒。東京大学医学部産婦人科など勤務後、2003年米ハーバード大学留学。11年東京大学医学部産婦人科講師、13年同准教授。16年9月から現職。〈所属学会〉日本産婦人科学会専門医・指導医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医など。

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