薄毛が気になる…気をつけるべきは「血糖コントロール」

糖尿病患者の3人に1人は皮膚トラブルを抱えるという
糖尿病患者の3人に1人は皮膚トラブルを抱えるという(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病というと「のどがやたらと渇く」「おしっこが泡立つ」「食後すぐに眠くなる」などの自覚症状が知られているが、忘れてならないのが「かゆみ」「斑点」などの皮膚トラブルだ。実際、糖尿病患者の3人に1人は、糖尿病が原因の皮膚トラブルを抱えるという。とくに糖尿病による「頭のかゆみ」は普通に洗髪しても治まらず、ハゲの原因になりかねない。糖尿病専門医でAGE牧田クリニック(東京・銀座)の牧田善二院長に聞いた。

「そもそも糖尿病の人は薄毛になりやすいといわれています。人間の体を覆う皮膚は、心臓や肺、腎臓などと同じ臓器で最大のもの。糖尿病は酸素や栄養を各臓器に送る血液が固まり、血管が詰まるなどして臓器にダメージを与える病気ですから、皮膚はもちろん、そこに生えている毛髪もダメージを受けるのです」

 髪の毛は毛根にある毛母細胞が分裂することで成長していく。それには大量の酸素や栄養が必要だが、それを供給するための皮膚下の毛細血管が糖尿病で血流障害を起こせば、髪の毛が弱るのは当然である。

 これに拍車をかけるのが糖尿病が原因の皮膚トラブル。一般的には皮膚や皮下組織が死滅する「糖尿病性潰瘍・壊疽」が有名だが、他にも皮膚に何もできていないのに皮膚が乾燥してかゆくなる「皮膚掻痒症」や水虫に代表される「皮膚感染症」、前頚部に色のついた斑点が出る「NLD(糖尿病性リポイド類壊死症)」「糖尿病性水疱」などがある。

「血糖値が高いと細胞が水分を吸収しにくく、脱水症状になりやすいので皮膚が乾燥します。さらに、高血糖による自律神経障害から汗をかく機能が低下し、体全体に皮脂が行き届かなくなるので乾燥肌になりやすいのです。これが皮膚掻痒症で、そのかゆみから皮膚をかき、傷口から細菌が入って感染症を起こしやすくなる。夏は日焼けなどのダメージにより皮膚トラブルに拍車がかかるのです」

■カビやウイルスの繁殖も

 ちなみに、リポイド類壊死症は血管壁の肥厚と脂肪沈殿とコラーゲンの変性疾患のことをいう。最初はだいだい色で、徐々に黒ずんでいく。糖尿病が原因で起こることが多く、血糖値の上昇による動脈硬化などの血管の障害によって発症するといわれている。男性よりも女性の方が3倍近く多く、30歳くらいで発症することが多い。

 糖尿病性水疱は手足にやけどをしたときのような水疱ができる病気で、放っておくと血液が循環せず、細胞死してしまう。

 もちろん、これらの病気の早期発見・早期治療は大切だが、糖尿病で頭頂部が気になる人がとくに注意しなければならないのは「脂漏性湿疹」や「帯状疱疹」だ。

「糖尿病で頭皮がかゆくなる原因は皮膚掻痒症以外に、脂漏性湿疹があります。皮膚に元からいるマラセチア菌と呼ばれる真菌が皮膚をエサに増殖、毛穴や毛穴周辺に炎症を起こします。結果、かきむしって頭皮が傷つき、かさぶたがたくさんできてフケがたくさんできるだけでなく、毛根が傷んでしまうのです」

 帯状疱疹は水疱瘡と同じ原因ウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルスにより発症するが、糖尿病の人は免疫が低下して発症しやすい。治療も遅れがちだ。神経障害により、帯状疱疹の初期に表れるピリピリした痛みを自覚しにくいからだ。

「帯状疱疹の好発部位は肋間神経や顔面の三叉神経ですが、全身の知覚神経に起こることがわかっています。そのため頭皮に出ることもあります。体の片側に出ることが多く、50歳から増え始め60~70歳代でピークになりますが、過労やストレスにより若い人に発症することもあります」

 厄介なのは、どちらの頭のかゆみも、カビやウイルスが原因なので普通に頭を洗っても治まらないこと。

「かゆみがあり、かくとフケが出るので、抗真菌剤入りの薬用シャンプーを使って熱心に洗髪する人がいますが逆効果になることも。皮脂が取れて頭部が乾燥し、かゆみを増すことがあるのです」

 こういう人はまずは原因疾患を治さなければかゆみは取れないし、大前提として血糖値をコントロールしなければならない。解決するには下手に自己判断せずに、まずは糖尿病専門医か皮膚科の医師に相談することだ。

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