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砂糖の過剰摂取は「うつ病になりやすい」は本当か?

糖分は適度に摂取
糖分は適度に摂取(C)日刊ゲンダイ

 砂糖の摂取量が多いと、うつ病の発症リスクが増加する可能性を示した研究は過去に複数報告されています。そのメカニズムは、砂糖のような糖質を過剰に摂取することで体のホルモンバランスが乱れ、それが精神状態に影響を及ぼしている可能性や、砂糖の摂取がもたらす体重増加や肥満が、うつ病発症のリスクとなっているのではないかと考えられているようです。

 そんな中、砂糖の摂取とうつ病発症リスクの関連を検討した研究が「サイエンティフィックリポート」という自然科学の専門誌に2017年7月28日付で掲載されました。

 この研究では2万3245例が解析対象となっており、砂糖の摂取頻度が高い集団から低い集団まで3つの集団に分け、うつ病を含む精神疾患の発症を比較しています。

「年齢」「性別」「喫煙」「飲酒状況」などの因子で統計的に補正して解析した結果、食品・飲料からの砂糖摂取量が最も低い集団に比べて、最も高い集団の男性では5年後の精神疾患の発症が23%増加することが示されました。

 この研究では食品・飲料からの砂糖摂取が心理的健康に悪影響を及ぼすことが示唆され、「砂糖の摂取量を抑えることで、より良い心理的健康状態を維持できるかもしれない」と結論しています。

 しかしながら、示されたリスクは男性のみであり、この研究結果だけで因果関係を決定づけることは難しい印象です。

 そもそも糖質の過剰摂取は糖尿病など慢性疾患の発症要因になりえます。

 また逆に低糖質ダイエット(糖質制限)については、死亡リスクが増加する可能性が指摘されており、いずれにせよ糖分は適度な摂取が望ましいという無難な結論に落ち着きそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。