エビデンスに基づいた手術を行い、30年近く経っても何の問題もない患者さんがいる一方、エビデンスに基づいたとはいえない手術によって再手術が必要になった患者さんには、大きな負担を強いることになってしまいました。
この2人の患者さんから教えられたのは、患者さんの年代に応じて将来的なことまできちんと考慮し、治療を選択しなければならないということです。その患者さんがまた同じ病気を再発して苦しむ可能性がある治療ではなく、再発したとしても、その時点で大がかりな治療は必要ないまま天寿を全うできるような治療を行わなければならないのです。
さらに、外科医は自分が選択して行った治療のエビデンスについて、その後もしっかりフォローしていかなければなりません。手術をしたらそれで終わりというような“やりっぱなし”ではなく、自分の行った治療が、その後の世界の大きな治療実績の流れにどのように乗っているかについて、各自が検証していく義務を負っているのです。そして、それを次の患者さんに生かしていく。これが誠実な外科医というものです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」