女性の社会進出と定年延長は時代の流れです。サラリーマン世帯は、3組に2組が共働きで、25~54歳の女性は平均就業率が69%に上昇。65歳以上の男性は、3割が仕事の継続を望んでいます。そんな2つの要素が、現役世代のがんと密接にかかわっていることをご存じでしょうか。
女性の場合、乳がんは40代、子宮頚がんは30代に発症のピークがあり、若い世代にまれではありません。がん全体でも54歳までは男性より女性が多いのが特徴です。
乳がんで亡くなった小林麻央さんは、いろいろな場面で大きな影響を与えました。女性の社会進出が増えることは、あのようなことが職場や家庭とも密接に結びつくことを物語っているということです。
男性は55歳ぐらいでがんが増えます。年金財政などと絡んで定年は60歳から65歳に延長されますが、そうなると男性も現役世代でがんを発症する人が増えるのです。
男性の場合、39歳までにがんになる確率は0.9%に過ぎません。しかし、49歳で2.4%、59歳で7.7%と年齢が上がるにつれて上昇。60歳を越えると振れ幅が大きくなり、69歳で2割、79歳では4割近くが何らかのがんになります。全年齢を合わせると、6割に上るのです。
■告知後2週間は決断をしない
そこで、大切なのが告知された直後の対応。がんと診断されると、3割は離職します。しかも、そのうち4割は治療がスタートする前に会社を去っているのです。
がんと告げられて頭が真っ白になり、その後の説明も分からず、どうやって家に帰ったかも覚えていないという方は珍しくありません。精神的にも肉体的にも動揺し、一時的とはいえ極度のうつ状態になります。
それで、自暴自棄になったりして辞職をする人が少なからずいるのですが、この状況で冷静な判断をするのは困難ですから、重大な決断をするのはよくありません。うつ状態は通常、2週間ほどで少しずつ平常に戻ってきます。大事なことを決めるのはそれからにするのが無難です。
では、そんなときの相談相手が気になるところでしょう。各都道府県にある、がん拠点病院の相談支援室や産業保健総合支援センターなどです。拠点病院の相談支援室は、受診していなくても利用可能ですから、仕事と治療の両立で悩んだときは役に立つことでしょう。ぜひ頭に入れておいてください。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁