Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

治療と仕事の両立<2> 困ったら拠点病院と産保センターへ

一人で抱え込まない(C)日刊ゲンダイ

 男性の場合、39歳までにがんになる確率は0.9%に過ぎません。しかし、49歳で2.4%、59歳で7.7%と年齢が上がるにつれて上昇。60歳を越えると振れ幅が大きくなり、69歳で2割、79歳では4割近くが何らかのがんになります。全年齢を合わせると、6割に上るのです。

■告知後2週間は決断をしない

 そこで、大切なのが告知された直後の対応。がんと診断されると、3割は離職します。しかも、そのうち4割は治療がスタートする前に会社を去っているのです。

 がんと告げられて頭が真っ白になり、その後の説明も分からず、どうやって家に帰ったかも覚えていないという方は珍しくありません。精神的にも肉体的にも動揺し、一時的とはいえ極度のうつ状態になります。

 それで、自暴自棄になったりして辞職をする人が少なからずいるのですが、この状況で冷静な判断をするのは困難ですから、重大な決断をするのはよくありません。うつ状態は通常、2週間ほどで少しずつ平常に戻ってきます。大事なことを決めるのはそれからにするのが無難です。

 では、そんなときの相談相手が気になるところでしょう。各都道府県にある、がん拠点病院の相談支援室や産業保健総合支援センターなどです。拠点病院の相談支援室は、受診していなくても利用可能ですから、仕事と治療の両立で悩んだときは役に立つことでしょう。ぜひ頭に入れておいてください。

2 / 2 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。