気鋭の医師 注目の医療

4Kモニターで声帯病変を“見える化” プロ専門のクリニック

声のクリニック赤坂こまざわ耳鼻咽喉科の駒澤大吾院長
声のクリニック赤坂こまざわ耳鼻咽喉科の駒澤大吾院長(提供写真)
声のクリニック赤坂こまざわ耳鼻咽喉科(東京都港区) ・駒沢大吾院長

 歌手、俳優、声優、ナレーター、アナウンサーなど声を職業とするプロのパフォーマーから絶大な信頼を得ている駒澤大吾院長(写真)。駒澤院長自身が日本のソウルシンガーの大御所、故渡辺大之伸氏を師匠にもつ、歌手であるうえ、現在も都内のライブハウスのステージに立つ“歌う医師”だからだ。昨年末、声の診療に特化したクリニックを開院した。

「都内に音声医学を専門とする医療機関はいくつかあります。しかし、プロのパフォーマーを専門に診療する施設はほとんどありません。患者さんにとって声帯は大事な楽器です。それをクリニックベースで気軽にチェックできる施設が必要だと思ったのです」

 来院する患者はプロの割合が47%と高く、有名な歌手も多い。

 スタッフは全員、パフォーマーの気持ちをよく理解しているプロの歌手やMC。同じ仲間として患者に寄り添う診療を心掛けている。そもそも、パフォーマーの声の不調は、一般の声がれの患者とは求める改善の質が全然違う。

 またジャンルやレベルによっても異なる。院長が現役の歌手だからこそ、理想とする声の表現ができなくなっている患者の訴えを受けとめられる。

「当院の特色は、声帯のどんな小さい病変にもこだわること。他院で『こんな小さい病変が歌に影響するわけがない』と言われ、行き場をなくして困っている患者さんは多い。症状の原因となる病変が声帯にない場合も、発声に関わるその他の要素を徹底的にチェックします」

■本番3日前受診でも集中治療なら

 こうした詳細な診療ができるのは、設備面にも特色があるからだ。声帯の振動は毎秒100回以上の高速な動きをするため、診察ではストロボスコープという機器を用いてスローモーション化して観察する。従来の2Kモニターでは微小病変の診察には限界があったが、同院では4Kモニターを導入。解像度がまったく違って立体的な観察ができるので、普通なら見逃されてしまうような微細な病変でも的確に“見える化”できるという。

「声の検査やリハビリテーションでは、実際に歌唱をしていただいて症状や声の状態を把握する必要があります。当院では天井高が3・1メートルある完全防音の発声室を備えているので、実際の現場に近い空間で声が出せます。あらゆるジャンルに対応できる音響設備も備えています。場所がTBS(TV局)に近いので、ここで直前にリハビリをして本番に出演する歌手の方もいます」

 歌声の不調の中には、声帯そのものに障害がなくても、声帯の調節が不調になる症例もある。その場合、専門医でも診断ができず、従来の音声治療では治らない。しかし、駒澤院長は国内で唯一、以前からこの状態について学会発表を続けており、リハビリによる治療を行っている。

「患者さんの中には稽古で声帯を使い過ぎて、声帯炎を起こして駆け込んでくる患者さんもいます。その場合、遅くても本番3日前に受診して集中的な治療をすれば、クラシック以外であれば何とかしのげることが多い」

 声を使うパフォーマーにとっては唯一無二、頼れるクリニックだ。

▽奈良県出身。2007年奈良県立医科大学医学部卒。国際医療福祉大学病院で研修後、同大三田病院耳鼻咽喉科、山王病院・国際医療福祉大学東京ボイスセンターで勤務。16年12月開院。〈所属学会〉日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本喉頭科学会、日本音声言語医学会など。