数字が語る医療の真実

【かっけ】日本の学者の無理解が世界的大手柄を奪った

 もし鈴木梅太郎のオリザニン抽出後、日本がその先の研究に国を挙げて取り組み、この抗かっけ物質の同定が日本でなされていれば、ノーベル賞は彼に対して与えられていてもおかしくはありません。そうなれば、今われわれが「ビタミン」と呼んでいるものは、「オリザニン」と呼ばれていたかもしれません。

 今では多くの種類が明らかにされているビタミンですが、その最初はかっけとの戦いから発見され、そこには多くの日本人が関わっていたのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。