がんと向き合い生きていく

本人に隠すのは昔の話 「がん告知」は時代によって変わる

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 しかし、医療情報がテレビ、情報誌、インターネットと日常生活の場にあふれるようになりました。21世紀に入ってからは、患者が自分の病気を知り、医療行為、治療方法を自分で選択する。そして、より専門的な医療、先端医療を求め、医師、医療機関を自由に選択することが当然のようになってきました。

 つまり、患者の基本的な権利として、①個人の尊厳、平等、最善の医療②医療内容を知る権利③自己決定権④検証権(セカンドオピニオン、診療記録の閲覧)⑤秘密保持などが叫ばれるようになったのです。

 病気で苦しむのは患者自身であることから、患者自身の権利として「インフォームドコンセント」「真実を知る」「がんであることの告知」は、ここで当然のこととなってきました。また、かつての「がんであることを告げるか告げないか」の議論から、「いかに真実を伝え、患者をどう援助していくか=告知後に患者をどう支えるか」の議論に変わっていきます。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。