決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

慶応病院の医業経費 全国平均より5倍近くも薬にかける

2015年度に約20億円増額
2015年度に約20億円増額(C)日刊ゲンダイ

 慶応病院が都立病院などと比べて高い医業収入(2016年度で563.6億円)をあげている様子は分かりました。では経費はどうでしょうか。そこで慶応大学の決算書を見ると、2016年度の医業経費の合計は252.8億円ほどになっていました。これには人件費は含まれていません。

 もっとも大きい金額を占めているのが医薬品。入院患者用と、外来患者への注射や点滴などで使われた薬代で、院外処方分は当然含まれていません。(社)日本病院会などの調査によれば、一般病院の医薬品経費の全国平均は、100床当たり約2900万円/月となっています。これを慶応病院の規模(1044床)に適用すると、年間で約36億3000万円になります。ところが慶応病院のそれは174億円ですから、全国平均よりも5倍近くもクスリに金をかけていることになるのです。

 慶応病院の医薬品経費は、2014年度は153.5億円でしたが、2015年度には173.1億円に跳ね上がっているのです。2014年は、それまででもっとも多くの新薬が日本国内で承認・発売された年でした。超高額で名を馳せたオプジーボも、この年の9月から発売されています。つまり慶応病院は、最新の高額医薬品を、常に積極的に治療に取り入れているわけです。またそうした先進性が、多くの患者を引き付ける魅力のひとつになっているのでしょう。

 経費のうち最大の割合を占めるはずの人件費は、残念ながら分かりません。慶応大学全体の数字しか公表されていないからです。慶応病院のホームページによれば、医師を含めた職員の合計は2635人となっています。その人件費の平均をいくらとみるかで、総額の数字が変わってきます。たとえば、1000万円/人とすれば、総額263.5億円になります。

 しかし医師数は854人(うち67人が研修医)となっており、あまりに多すぎます。実際には医学部の教員を兼務していたり、外の病院に非常勤で出ている医師も大勢おり、フルタイムで働いている医師は少ないと思われます。また看護師やその他の職員の人件費も、そんなに大盤振る舞いはあり得ません。

 その他の雑費も不明ですが、慶応病院はおそらく黒字経営でしょう。ちなみに大学全体の事業活動収支は112.4億円の黒字となっています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。