決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

三井記念病院の本業収益 眼科と循環器が強い?

差額ベッド代と健康診断も経営の柱となっている
差額ベッド代と健康診断も経営の柱となっている(C)日刊ゲンダイ

 秋葉原にそびえる三井記念病院は、1909年開業、ベッド数482床という老舗大病院。2006年から「100周年記念事業」として建て替えが始まり、2011年にすべての工事が完了しました。

 三井グループのための病院ではなく、誰でも受診できる一般病院です。しかし、三井グループの全面的なバックアップを受けており、グループ全体の広報活動を担っている三井広報委員会によれば、建て替え工事は「三井グループの支援を受け、総事業費230億円を投じた」大プロジェクトだったそうです。

 社会福祉法人の形態をとっており、介護事業なども展開していますが、病院単独の決算も公開されています。一般企業の損益計算書に相当する「事業活動計算書」から、サービス活動収益(本業による収益)の主な数字を拾って<表>にまとめました。

 収益の合計は193.1億円、そのうち192.0億円が医療事業によるものでした。その他は補助金、寄付金、駐車場代、製薬会社の治験請負代金など。民間病院なので、国や都からの補助金は微々たるものです。ただし社会福祉法人ですから、原則として税金を払う必要がありません。

■差額ベッド代と健康診断も柱に

(社)日本病院会などの調査によれば、400床以下の一般病院の医業収入の平均は、100床当たり1億9700万円/月。三井記念病院のベッド数に当てはめると、年間約114億円となります。しかし実際にはその1.7倍近い金額を売り上げており、収益力の高さが光ります。特に眼科と循環器科が評判で、周辺地域のなかで高いシェアを占めています。

 入院と外来の収益比率は、普通は2対1程度ですが、三井記念病院は外来比率がやや高くなっています。場所がいいので、秋葉原周辺のサラリーマンなどが多く集まってくるのでしょう。

 差額ベッド代は3000~8万円と幅があります。それぞれの価格帯が何室あるかは明示されていません。ただ決算書には「室料差額収入」として9.1億円が計上されています。同規模病院の平均は1.4億円に満たないので、差額ベッドでかなり儲けているといってよさそうです。また、保健予防活動(健診・人間ドックなど)で8.6億円(同規模病院の平均は8400万円)を計上しており、こちらも有力な収入源になっています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。