秋は不調訴える患者急増 夏バテ胃腸は「傾腸」で立て直す

低FODMAP食を意識する
低FODMAP食を意識する(C)日刊ゲンダイ

 夏の終わりから秋口にかけては、胃腸の不調に悩む患者が増えるという。夏バテした胃腸を早く立て直すには「傾腸」が効果的だ。「パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません」の著者で消化器専門医の江田証氏(江田クリニック院長)に詳しく聞いた。

「冷たいものを取り過ぎたり、暑かったり涼しかったりを繰り返して自律神経のバランスが乱れたり、夏休み中の帰省で親戚や来客に気を使ったり……。夏場はこうした要因が重なって胃腸が疲弊します。その疲れが、下痢や腹痛といった不調になって秋口に表れるのです。夏の終わりから秋口にかけては、患者さんの数が普段の2~3割増しになります」

 そんな夏バテ胃腸を素早く立て直すためには、胃腸に大きな影響を与える飲食物を見直すことが有効だ。何が自分に合っていて合っていないのか。胃腸の状態に耳を傾ける「傾腸」が重要だという。

 傾腸を実践するには、「低FODMAP食」を活用する。FODMAPとは、「発酵性」のある「オリゴ糖類」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」のアルファベット表記の頭文字に「AND」を加えて並べたもの。これらの糖質は小腸で吸収されにくいため、小腸の中の浸透圧が高まって水分が過剰にたまり、下痢や痛みを引き起こす。また、小腸で吸収されにくいこれらの糖質は大腸まで到達し、大腸内の腸内細菌と反応して異常発酵を起こす。これにより、水素ガスがたくさん生産されてお腹の張りや便秘の原因になる。これらの糖質を避けた食事を3週間続けると、8割の人で胃腸の調子が回復するという。

「低FODMAP食は、そもそも過敏性腸症候群などの胃腸の不調に悩む人に向けて、オーストラリアのモナッシュ大学で考案されたものです。厳密には、まず3週間、すべてのFODMAP食を除去し、その後で高FODMAP食のグループをひとつずつ摂取していく。その都度、食べると胃腸の不調を招くような高FODMAP食を確認し、自分の体に合っていない高FODMAP食を食べないようにする食事法です。ハーバード大学などもその有効性を認める論文を発表しています」

■低FODMAP食を意識する

<表>にあるような高FODMAP食をすべて避ければ、小腸の負担が減って夏バテ胃腸を立て直すことができる。ただ、徹底するのはなかなか難しい。

 そこで、簡易的に5種類の高FODMAP食を1種類ずつ、3日間控え、胃腸の調子を確認してみる。

①「フルクタン」を控える:小麦食品(パン、ラーメン、パスタ、シリアルなど)、ニンニク、タマネギなどに含まれる。②「ガラクトオリゴ糖」を控える:ひよこ豆、レンズ豆などの豆類、ゴボウ、サトイモなどに含まれる。

③「乳糖」(ラクトース)を控える:牛乳、ヨーグルト、プリン、アイスクリームなどの乳製品に含まれる。

④「果糖」(フルクトース)を控える:ハチミツや果物に含まれる。中でも、リンゴ、モモ、サクランボ、マンゴー、スイカは果糖が多い。

⑤「ポリオール」(ソルビトール、キシリトールなど)を控える:シュガーフリーのガムやミント菓子、リンゴ、ナシ、モモ、スイカなどの果物、カリフラワー、キノコ類などの野菜に多く含まれる。

「5種類の中で、もっとも胃腸の不調の原因になっているケースが多いのが『フルクタン』です。普段から悩んでいる人はもちろん、夏バテ胃腸を立て直したい人は、まずフルクタンの摂取を控えて傾腸してみてください。また夏が旬のスイカやモモを多く食べていた人は、『果糖』や『ポリオール』を取り過ぎていたことも考えられます。胃腸を立て直すには、それらを避けてみましょう」

 それでもハードルが高いという人もいるだろうが、意識して高FODMAP食の摂取量を減らすだけでも、症状が改善することがわかっている。胃腸の不調に悩んでいるなら試してみる価値はある。

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