決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

三井記念病院の給与 医師は都内平均より高いのか?

三井記念病院
三井記念病院(C)日刊ゲンダイ

 三井記念病院の2015年度の本業収益は、約193・1億円でした。それに対して費用は約193.4億円。差し引き3000万円ほどの赤字となっています。

 人件費は87.2億円と、意外と低く抑えられています。人件費比率(本業収益に占める人件費の割合)は約45%。多くの病院が50%を超える人件費で苦しんでいる中、この数字は驚異的です。

 ほかに大きいところでは医薬品38.5億円、材料費19.0億円、業務委託費(検査・給食・寝具・清掃・医療事務など)10.9億円などとなっています。

 本業以外も含めた収支は、約21億円の赤字でした。社会福祉法人の会計基準が変更になったことなどにより、20億円以上の特別損失を計上したことが影響しています。それを除けば、収支はほぼトントンになっています。

 三井記念病院の決算書(事業活動計算書)には、職種別の職員人件費がきっちりと書かれています。その中から医師と看護師の給与・賞与に絞って<表>にしました。

■医師の給与・賞与の合計は18・8億円

 医師の給与・賞与の総額は18.8億円あまり。病院のホームページには医師数が書かれていませんが、民間の医療情報サイトである「病院情報局」によれば、常勤換算で189.5人となっています。非常勤医師の勤務時間が常勤医師の何人分に相当するかを計算し、それを常勤医師の人数に加えた数字です。この人数で総額を割ると、医師1人当たりの年収は993.5万円となります。内訳は給与(月給)が68.4万円、ボーナス(年間)が173.0万円です。

「医師=高給取り」という世間の常識からすれば、かなり安い印象を受けます。しかし厚生労働省の「2015年賃金構造基本統計調査」によれば、勤務医の年収の全国平均は1098.2万円、東京都は902.2万円となっており、三井記念病院は都内ではむしろ高いほうに入ります。

 同じく「病院情報局」によると、看護師数は522.6人となっており、この人数で計算すると、年収521.3万円(月給34.8万円、ボーナス104.1万円)となります。東京都の看護師(女性・平均年齢36.1歳)の平均年収は545.5万円(厚生労働省)なので、平均よりも低く抑えられています。三井記念病院の看護師の平均年齢が、東京都のそれよりも低いからか、あるいは働きやすい職場環境なのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。