余命4カ月と言われた私が今も生きているワケ

もう二度とベルトコンベヤーのような手術はしたくない

高橋三千綱氏(C)日刊ゲンダイ

 酒を控えるようになると暇になった。

 飲んでいた頃は正気な時だけが使える時間だったが、飲まないと、「こんなに時間があったのか」と思うほどすべてが自分の時間となった。空漠としていた時間はすべて自分のものとなった。世の中の飲み助も、ずいぶん時間を無駄にしているのではないかと思う。

 10年くらいたまっていた仕事があった。126枚くらいまで進んでいたが、本にするには300枚くらいは必要になる。それを入院中にあっという間に仕上げてしまった。あと2枚くらいで終わりという時にパソコンのデータを消してしまい、「ギャー」と病室中に響く叫び声を上げるアクシデントもあったが、かえって推敲ができたからよかったのかもしれない。

 それが4年前のことだが、それからも「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「投資家の父より息子への13の遺言」「さすらいの皇帝ペンギン」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」の4冊の本を出した。その間には時代小説「右京之介助太刀始末」シリーズの「お江戸の姫君」「お江戸の信長」の2冊も書き上げている。もの凄く仕事をしているのだ。

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高橋三千綱

高橋三千綱

1948年1月5日、大阪府豊中市生まれ。サンフランシスコ州立大学英語学科、早稲田大学英文科中退。元東京スポーツ記者。74年、「退屈しのぎ」で群像新人文学賞、78年、「九月の空」で芥川賞受賞。近著に「さすらいの皇帝ペンギン」「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」がある。