余命4カ月と言われた私が今も生きているワケ

もう二度とベルトコンベヤーのような手術はしたくない

高橋三千綱氏(C)日刊ゲンダイ

 2013年4月、今度は「胃がん」を宣告された。女房が医師に呼ばれ、「手術しなければ半年後は覚悟してください」と言われ、真っ青な顔をして面談室から出てきた。僕はそのとき、「放っておけ」と彼女に伝えた。オレの体だ、と。

 半年後に死ぬと言われても、手術したら仕事はできなくなる。むしろ、女房には「手術したら半年後にオレは死ぬよ」と伝えた。中上健次は腎臓がん、つかこうへいは肺がんだった。つかとは20代のころからの付き合いで、同じ糖尿病仲間でもあったが、62歳で亡くなっている。僕の知り合いで、がんの手術をした人はだいたい半年で死んでいるから、女房には「手術すれば半年。しなければ5年は生きる」と言ったのだ。

 実際、胃がんと言われてから4年半。肝硬変で死ぬと言われてから8年も経っている。

 かかりつけ医の先生も肝硬変の診断については懐疑的で、「余命4カ月なんてありえない」と言っていた。そういう言い方をする専門医も「おかしい」と話した。肝臓というのは臓器としては古く、原始生物みたいなもの。そう簡単にはダメにならないらしい。

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高橋三千綱

高橋三千綱

1948年1月5日、大阪府豊中市生まれ。サンフランシスコ州立大学英語学科、早稲田大学英文科中退。元東京スポーツ記者。74年、「退屈しのぎ」で群像新人文学賞、78年、「九月の空」で芥川賞受賞。近著に「さすらいの皇帝ペンギン」「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」がある。