事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か 麻酔専門家に聞いた

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「そうでないのなら、医師、看護師、助産師らが救急対応の資格を持ち、適切な処置を行えるようにすべき。ところが実際は、人員不足や、無痛分娩に対する認識不足などのさまざまな理由から、それらがおざなりになっているのです」

 無痛分娩には、教科書のような存在であるガイドラインがない。だからこそ、徹底した安全対策が重要になる。

 無痛分娩の豊富な経験と適切な知識を持つ医療スタッフがいる医療機関であれば、無痛分娩はメリットが非常に多い。痛みがないため、脳内出血やくも膜下出血を招く妊婦の血圧上昇を避けられる。脳内出血、くも膜下出血は妊婦の死因の3位と4位。結果的に、出産による死亡のリスクを下げることができる。

 痛みは呼吸回数を減らすが、無痛分娩であれば、母子ともに安定した酸素を提供できる。また、1~2分を競うほど緊急に帝王切開へ移行しなければならない事態が起こった場合、硬膜外麻酔をすでにしているので、速やかに行える。

 もし、無痛分娩を考えるなら、医師や看護師などの医療スタッフの麻酔分娩に対する知識、そして、無痛分娩の件数などを確認すべき。麻酔科医の間では、「1人の医師につき硬膜外麻酔月10件が確かな技術を維持できる指標」という見方もある。ひとつの目安にしてもいいかもしれない。

3 / 3 ページ

関連記事