決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

差額室料だけで約33億円 聖路加国際病院“驚異の収益力”

差額ベッド代、人間ドックに特徴
差額ベッド代、人間ドックに特徴(C)日刊ゲンダイ

 聖路加国際病院は築地本願寺から徒歩数分に位置する、520床の総合病院です。学校法人聖路加国際大学(看護学部のみの単科大学)の付属施設という位置づけになっています。2013年までは財団法人のかたちを取っており、大学の方が病院付属でしたが、14年度からいまのかたちに改組しました。

 学校法人の決算書が公開されているので、そのなかから医療収入に関する項目を抜き出して〈表〉にしました。

 医療収入は総額343億円となっています。都立大塚病院(500床)の医療収入が129億円ですから、聖路加の稼ぎっぷりは半端ではありません。慶応病院よりも効率よく稼いでいる計算になります。

 入院収益は197億円、外来収益は103億円あまり。入院患者の延べ数が公表されていないため、患者単価は分かりません。しかし外来患者数は、ホームページによれば、2700人/日となっています。たいへんな繁盛ぶりです。診療日数を年間270日として計算すると、患者単価は1万4000円ほどになります。

■人間ドックの収益にも要注目

 もっとも注目すべきは差額室料収益です。それだけで33億円近く、入院収益の約17%を稼ぎ出しているのです。(社)日本病院会などの調査によれば、一般病院の差額室料収益の平均は、入院収益の2%に過ぎません。

 ちなみに厚生労働省の指針により、一般病院は差額ベッドを全病床の半分以下に抑えなければならないことになっています。しかし聖路加は全室個室で、多くは差額ベッドです。厚労省の指針が出る以前からそうしていたから、ということなのでしょう。差額ベッド代は3万2400円から10万8000円(小児個室などは、もっと安い部屋もあります)となっています。

 もうひとつ注目すべき点は、予防医療センター収益、つまり人間ドックによる収益です。故・日野原重明名誉院長こそ、人間ドックを最初につくり、普及させてきた人ですから、聖路加は老舗中の老舗、その売り上げは約32億円に達しています。料金は2日コースで20万5200円、3日コースが37万5840円、1週間なら69万5520円なり。

 また同じ敷地内に聖路加助産院がありますが、こちらは19床のクリニック。出産自体は病院、産後のケアは産院というように使い分けています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。