がんと向き合い生きていく

「余命1カ月」と記された書類にサインをさせられた患者

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 Fさん(56歳)は膵臓がんと診断され、手術を受ける予定でBがん専門病院に入院しました。しかし、手術直前の検討会で「病気の進行が速いため手術は無理」と判断されて退院となり、以後は内科外来に通院となりました。

 通院しながら抗がん剤治療を始めて2カ月、今度は39度の発熱があって緊急入院。抗生剤点滴などの治療を5日間受けて解熱し、退院することになりました。その際、担当医から書類が渡され、署名を求められたといいます。内容は、「これまで膵臓がんに対して抗がん剤治療を行ったが、期待される効果は得られず中止とする。余命1カ月が考えられる。ご自分らしい日々を送っていただくために在宅で過ごされることを支援いたします」といったものでした。そして、一緒に近医への紹介状も渡されました。

 Fさんは、これまでもたくさんの書類にサインしてきましたが、今回のサインの時は苦笑したそうです。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。