天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「卵円孔開存」は術後の感染症心内膜炎リスクを高める

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 また、アトピー性皮膚炎や膠原病などで強いステロイド剤を使用している場合にも、皮膚の感染免疫が低下することから、外傷で容易に細菌が血中に入りやすい状況になります。治療中の人は特に注意が必要です。

 感染性心内膜炎は早期の診断・治療が重要なので、定期的な心臓検査も大切です。

 自己管理のほかに、「卵円孔開存」という生まれつきの心臓の構造が、感染性心内膜炎の発症に関わっていることも分かっています。右心房と左心房の間に小さな穴=卵円孔が開いている状態をそう呼んでいます。

 本来、卵円孔は出生時に閉じるものなのですが、中には閉じないまま成長するケースがあり、成人の15~20%が該当するといわれています。穴が大きくない場合は特に心配することはなく、多くの人は問題ありません。しかし、弁の交換をした患者さんは注意が必要です。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。