■かつては“無視”されていた
右心房と左心房の間に小さな穴があると、ちょっとした拍子で血液が行き来することになります。つまり、全身から右心房に流れ込んだ静脈血と、肺で酸素を取り込んで左心房に入った動脈血が少量でも混ざってしまうということです。静脈血は全身を巡ってから戻ってくる血液なので、体内に侵入した細菌が入り込んでいる場合があります。その細菌が卵円孔を通して左心房に入り込み、弁に取り付いてしまうリスクがアップしてしまうのです。
そのため、大動脈二尖弁による弁置換の治療を行う際は、細心の注意を払って卵円孔が開いていないかどうかを確認しています。卵円孔開存の患者さんは、弁の交換と同時に穴を閉じる処置を行っています。かつては、卵円孔が術後に問題を引き起こすことが分かっていなかったため、穴があってもまったく気にすることなく、そのまま手術が行われていました。しかし近年は、穴をふさぐことで血液の行き来をなくし、細菌が弁に巣くって感染性心内膜炎を引き起こす可能性を根絶やしにしておくのです。足の静脈にできた血栓が卵円孔から左側の心臓に入って起こす脳梗塞の防止にもなります。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」