これで「物忘れ」は怖くない

年を取るとなぜ物忘れが増える? 脳神経外科医に聞いた

あれ?何だっけなあ…(写真はイメージ)
あれ?何だっけなあ…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 人の名前が思い出せない。どこに物を置いたか忘れてしまう――。そんな「物忘れ」が昔より増え、不安を覚える人も多いだろう。そもそも、なぜ年を取ると物忘れが増えるのか? くどうちあき脳神経外科クリニック(東京・大田区)の工藤千秋院長が言う。

「どんなに高性能のコンピューターでも、長年使っているとだんだん劣化してきますよね。同じように、脳の中の“海馬”というコンピューターを使い続けると、その中の神経細胞にゴミがくっついてきて電気の流れが悪くなったり、停電してしまったりするのです」

 海馬は大脳の中心部分にある大脳辺縁系の一部であり、記憶をつかさどる器官だ。年齢を重ねると、その海馬の神経細胞に付着するアミロイドベータという老廃物が排出されづらくなる。そのアミロイドベータ(ゴミ)がたまると、神経細胞の伝達機能が低下したり、細胞自体が死滅したりする。これが物忘れの原因だ。

 実は、記憶がため込まれるのは海馬ではない。外部から入力された情報はいったん海馬に集められ、取捨選択される。眞田クリニック(東京・大田区)の眞田祥一院長が説明する。

「重要な情報は大脳皮質に保管され、そうでない情報は海馬に一時保管された後に消去されます。つまり古い記憶は前頭葉や側頭葉などにあり、新しい記憶は海馬にあるのです」

 その海馬の神経細胞が「ゴミ」のせいで死滅、もしくは機能低下するから、高齢になると新しいことを覚えづらくなる。

「神経細胞は3歳を過ぎると増えることはなく、減る一方です」(眞田院長)

 物忘れは年を取ればだれにでも起こり得る老化現象なのだ。過度に心配せず、前向きに対処しよう。