■本来は本人に意思を尊重
ここでは、A担当医がDさん本人の了解なしに、家族の前で「エイズの疑い」と言ってしまったことに大きな問題があります。
がんの告知は時代により異なります。1985年ごろまでは、患者本人にはがんという病名すら告知しませんでした。その後、2000年ごろまではがんの病名だけは告知しても、「予後」や「死」については話さない時代がありました。さらに2000年以降は「治らない短い命」まで告げる場面に出会うようになりました。
また、かつては患者本人に告知する前に、ご家族に「本人にはどう話すか?」と相談するようなこともありましたが、2005年の個人情報保護法で、法的には「まず、がんであることを本人に話す。家族に話すとすれば本人の了解が必要」となったのです。
いま、医師によっては本人を前にして「あと3カ月の命です。もう治療法はありません」などと告げている場面があると聞きます。そう告げられた患者さんはその後どう生きていけるのか、とても心配です。
がんと向き合い生きていく