独白 愉快な“病人”たち

平山みき 大腸がん闘病で「腸閉塞の予兆が分かるように」

「がんに関しては本当に運が良かった」と語る
「がんに関しては本当に運が良かった」と語る(C)日刊ゲンダイ

 大腸がんを患ったのは、もう22年も前のことになります。もともと胃腸が弱くて、子供の頃から薬を手放せませんでした。ずっと下痢をしやすかったのですが、がんと分かる1年ほど前は便秘が続いて……。かかりつけの内科医を受診すると、「大腸がんが増えているので検便をしましょう。次に来るときに持ってきてください」と言われました。しかし、小学生の頃の検便を思い出して躊躇している間に1年が過ぎてしまったんです。

 その間、便通を良くするために毎日ひとつずつパイナップルを食べました。果物は大好きだし、パイナップルは繊維がたくさん入っていて胃腸の働きを良くする酵素も含まれていると聞いたので、自力で治そうと……。

 しばらくは胃腸も安定していたのですが、体調を崩したのはその後です。家族でアメリカに旅行に行く数日前に胃がむかむかする感じがあって、内科医から薬を処方してもらいました。旅先で胃腸の調子が悪くなったときの準備です。

 それで安心していたところ、旅行前日の午後に激しい腹痛に襲われました。右側の下腹部が痛かったので「盲腸かな」と思いました。それで、薬を処方してもらった病院とは別の病院に電話をして「盲腸みたいなので、散らす薬はないですか?」と尋ねました。家族旅行をふいにしたくなかったのです。

 といっても、盲腸と決めつけているのは私で、正式な診断は出ていません。先生からも「診察してみないと病名は分からないのですぐに来てください」と言われて、病院に行きました。血液検査と触診を受けたところ、先生から「旅行どころじゃないですよ」と言われました。先生はすぐに総合病院に連絡を入れて、翌日診察を受けられるよう予約をしてくれたのです。

 総合病院では、「大腸と小腸がつながっているあたりにポリープができている。腹痛はその炎症からくる痛みです。腫れがひいたら開腹手術をします」と告げられました。

 当時はいまのように患者本人にがんを告知することはなかった時代です。実は家族はがんだと告知されていましたが、私は知らなかった。そのため「がんじゃないよね?」と不安でいっぱいだったことを覚えています。2週間後に開腹手術を受けました。すぐに手術にならなかったのは、がん付近が炎症で腫れていたからだそうです。

 入院当初は「がんかもしれない」と不安でしたが、だんだんと「やっぱりがんなんだろうな」と思い始めていました。なので、手術が成功し、退院間近になって家族から「実は大腸がんなんだよ」と告知されたときは、それほどショックはありませんでした。入院中、何度か「がんだったら嫌だね」と家族に話したのですが、そのたびに話は続かず、すぐに別の話題に移ることが続いていました。がんでなければ、「がんじゃないよ」と言えるはずなのに、そう言わないということは……。うすうす、がんだろうと思っていたんです。

■退院後、腸閉塞を起こして手術

 先生からは、「手術は成功した。抗がん剤などの治療も必要ないが、がんを取り除いて(腸を)つなぎ合わせた部分が癒着すると腸閉塞が起こる場合があるので気を付けるように」と言われました。なるべく歩くことと、繊維質を取り過ぎないように注意されました。

 とはいえ、腸閉塞が起こる割合は2割程度と聞いて、たかをくくっていたんです。それで、退院3カ月後に大好物の柿をいただいて、かなり大きかったのに2個も食べてしまったところ、激しい腹痛に見舞われました。ただ、そのときは嘔吐したら痛みが治まったので、そのままにしてしまいました。

 それから少し経って、繊維質の多い水菜をたくさん食べたときに再び激しい腹痛が……。病院に行くと、やはり腸閉塞を起こしているということでした。すぐに腸の動きを良くする薬を点滴で投与してもらい楽になりましたが、きっと柿を食べたときもそうだったんでしょうね。でも、ここで懲りないのが私で、春にはタケノコを食べちゃうんです(笑い)。

 そのうち、だんだんと腸閉塞の予兆のようなものも分かってきました。なんだかお腹がすいて、喉が渇く。繊維の多いものを食べてその症状が出ると、「あ、腸閉塞になりそうだな」と分かるんです。そうなったら、食事を絶って腸が動く点滴をすると4~5日で回復します。ただ、1度だけひどい症状で入院、手術を経験しました。いまも消化を促す薬を飲み、先生の勧めで漢方の「サルノコシカケ」も飲み続けています。

 懲りない私ですが(笑い)、がんに関しては本当に運が良かったなと感じています。もちろん、最初に検便を受け入れておけばもっと早くがんが見つかって、開腹手術ではなく腹腔鏡手術ができたかもしれないと思ったりもしますが、済んでしまったことは仕方がない。

 がんになっちゃったら、いま出来る治療を頑張って、どうやったら毎日を前向きに過ごせるかと気持ちを切り替える。ストレスをためず、クヨクヨしない。それがいちばんですね。

▽ひらやま・みき 1949年、東京都生まれ。70年にレコードデビューし、2作目の「真夏の出来事」が大ヒット。10月1日に「平山みき×代官山アマランスラウンジ 歌とバーレスクのフロアショーvol.2」(京都木屋町XLV)を開催。12月15~25日には6回目となる自身が主催する「ジングル★ウィーク」(ゼスト御池)も行われる。

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