モノ忘れ脱出 完全マニュアル

<4>「物忘れ」や「度忘れ」を一瞬で回避する4つの方法

脳に緊張を与えると逆効果
脳に緊張を与えると逆効果(C)日刊ゲンダイ

 連載1回目で取り上げた「想起」は、思い出す能力です。加齢で増える物忘れは、「想起」する力が弱まることとも関係しています。どんなにトレーニングを積んでも肉体が加齢で衰えるように、脳機能にも年齢的な衰えが出てくるのは仕方ないことです。しかし思い出せずにイライラするのは、脳によくありません。

 そこで、ぜひみなさんにやってもらいたい「物忘れ」や「度忘れ」を一瞬で回避する方法を紹介しましょう。

①10秒間黙る

 人の名前など思い出せない単語は脳の記憶のネットワークから引き出せない状態にあります。脳に緊張を与えると余計にうまく思い出せず逆効果です。

②関連することを10個言う

「あれ、あれ」と言っても、手掛かりにはなりません。むしろ関連する言葉をどんどん口にすれば、思い出せる回路にたどり着く可能性は高くなります。

③全く関係のないことを言う

「なぜ思い出せない」と理由にこだわり続けるとますます思い出せない。スパッと全く別の話題に切り替える。しばらく経つと、不思議に思い出せたりします。

④諦める

「楽観的」が重要。物忘れ、度忘れをネガティブにしないのも大切です。そんなことにとらわれている時間があれば、次の新たなことにチャレンジする方が、脳にとってよっぽど良い。

 ところで、避けようがない加齢による脳の老化ですが、少しでもその老化を遅らせ、健康に保つ確実な方法があります。それは「動脈硬化を防ぐ食生活」です。

 基本的なこととして、脳の血管が健康的だからこそ、脳の若さを保つことができる。それは、血管の動脈硬化の進行を遅らせることとイコールです。そのためには、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満を改善し、喫煙習慣、過剰なアルコール摂取、運動不足、偏った栄養バランスの食生活を見直す。「物忘れをなくしたい!」などと言いながら、肝心要の「動脈硬化を防ぐ食生活」を全く無視している人が多いというのが、私の実感です。

 最終回の次回では、世界で注目を集めている、あるキーワードについてお話ししましょう。

米山公啓

米山公啓

作家、医学博士。専門は神経内科。脳に関する著書多数。

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