Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

胃がん乗り越え3軍復帰 カープ赤松選手は体重減少が課題

胃がん手術から3軍に復帰した赤松真人選手(C)日刊ゲンダイ

 なぜか。胃は、食べ物を一時的に貯蔵し、固形状のものを細かくしたり、胃液と混ぜて粥状にしたりしてから、ベストのタイミングで十二指腸に送り出します。切除で貯蔵と送り出し機能が低下することで、その後の消化吸収が不十分になるのがひとつです。

■食欲増進ホルモンの影響で

 もうひとつは、食欲を増進させるホルモンのグレリンの影響。9割が胃の上部から分泌され、味覚にも影響します。手術で胃の上部が切除されると、残っている部分が大きくても食欲がわかず、思うように食べられなくなるのです。

 この2つの影響が合わさって、術後1~3カ月後に体重が減少。がん研有明病院の比企直樹医師の調査によると、胃を全摘の場合、術後1年で平均18%も体重が減っていたそうです。

 この時期は、手術後の回復過程でもあります。栄養状態が悪いと、縫合不全や出血など術後合併症のリスクが増しやすいことから、体重減少は、術後の状態に強く影響するのです。ステージ2Aや3Cでは、術後に再発や転移を起こすことがあり、抗がん剤が追加されることが普通です。そうすると、5年生存率が10%ほどアップするのですが、体重が15%以上減ると、7割近くが半年以内に抗がん剤を離脱するという報告があります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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