気鋭の医師 注目の医療

【オンライン診療】豊田剛一郎医師(株式会社メドレー)

オンライン診療アプリ「クリ二クス」(左は豊田剛一郎医師)
オンライン診療アプリ「クリ二クス」(左は豊田剛一郎医師)/(C)日刊ゲンダイ
上司の助言がキッカケに

 通信やIT機器を活用し、会社や自宅にいながらにして医者に診てもらえる「遠隔診療」。これまでは離島やへき地にいる患者以外は原則禁止と見なされてきたが、2015年8月以降、厚労省が遠隔診療の適応範囲を広く解釈できる通達を相次いで発表している。

 医療×ITベンチャーの同社は、遠隔診療を支援するオンライン診療アプリ「クリニクス」を開発し、昨年2月から医療機関と患者をつなぐサービスをスタートさせた。このシステムの立ち上げの中心となったのは、もともとは脳神経外科の臨床医だった豊田剛一郎医師。アプリの特徴をこう言う。

「クリニクスは、診察予約・問診、カメラ動画での診察、クレジットカード決済、薬・処方箋の配送までをインターネットを通じてワンストップで提供するものです。現在、契約する導入医療機関は北海道から沖縄まで全国約600施設(9割は診療所)。患者さんはスマホ、タブレット、パソコンから検索して、お近くの好きな医療機関を利用することができます」

 アプリは無料でダウンロードできるので、患者が負担する費用は「診察料」と「予約料」。ただし、保険診療を受ける場合は、初診は対面診療が必要(診療報酬のルール)になるので、利用できるのは再診以降になる。自由診療では初診からオンラインで診察を受けることもできるが、あくまでも対面と組み合わせることが前提の利用となる。

「もちろん遠隔診療と相性のいい診療科や疾患はあります。たとえば高血圧や糖尿病などの慢性生活習慣病では、症状が安定していれば医師の判断でオンライン診療に切り替えるケースも多いです。例えば2カ月に1回しか通院できない人の経過を見たい場合、間にオンラインを入れてもいい。人目が気になるAGA(男性型脱毛症)、ED、精神疾患なども受診しやすい。セカンドオピニオンにも向いていると思います」

■長期通院、予防医学で患者にもメリット

 実際、国内の禁煙外来では、4回以上通院を継続できた患者は対面診療では51%にとどまるが、遠隔診療を組み合わせると75%に増えたという診療結果が報告されている。

 そもそも豊田医師が転身したのは、臨床医で働くうちに国内の医療が抱える課題を知ったからだ。膨れ上がる医療費、超高齢化、医療現場スタッフのハードワークなど、このままでは医療崩壊を招きかねない。持続可能な新たな医療の仕組みが必要と危機感を持つ。その懸念を上司の医師に伝え相談したところ「医療を救う医師になったらどうか」と助言されたという。

 同社は、2年前に約600人の協力医師によって共同編さんされるオンライン医療事典「MEDLEY」をウェブ上で展開。この事業の立ち上げにも豊田医師は尽力してきた。

「厚労省のデータを見ると、高血圧の50代男性の半数は症状を放置しています。理由には『時間がない』『面倒』などがありますが、オンライン診療が定着すればもっと医師と患者さんのつながりが強くなり、受診しやすくなると思います。長期通院、予防医療がきちんと継続できるようにサポートできればと考えています」

 東京都出身。2009年東京大学医学部卒。聖隷浜松病院、NTT東日本関東病院での研修(脳神経外科)を経て、12年米ミシガンの病院に留学。13年マッキンゼー日本法人でヘルスケア業界などのコンサルティングに従事。15年からメドレーの代表取締役医師に就任。

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