がんと向き合い生きていく

患者だけでなく一緒に暮らす家族にもケアは必要

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Zさんの夫(52歳)は悪性リンパ腫が再発し、化学療法を繰り返していました。担当医からは「治療で腫瘤が一時的に縮小しても、すぐに大きくなってくる。この病気は完全に消失しないことには厳しい」と言われていました。

 夫は化学療法直後の嘔気などの副作用で会社を休んだりもしますが、仕事では課長職を守り、頑張っていました。妻であるZさんには笑顔を見せることが多いのですが、Zさんはかえってそれが悩みを見せまいと無理をしているようにも思いました。

 もちろん、夫が頑張っているのは分かっています。しかしZさんは、自分がどうしたらいいのか、どうやって協力していけばいいのか、このままでいいのか、高校受験の息子にはどう話したらよいか、もし夫が亡くなったらどうすればいいか……といったさまざまな悩みを抱えていました。まさか、夫に相談することもできません。

 そんなある時、夕食をとっていた夫が「俺の口内炎がひどいのに、こんな辛いものを作って! 食べられない!」と怒りだしたそうです。これまで、料理に文句を言ったことなんてなかったのに……。Zさんはすぐに謝ったそうですが、いつも優しかった夫の豹変に戸惑ったそうです。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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