決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

愛知医大病院は1日の外来患者数が2500人超と大健闘

川崎医科大学
川崎医科大学(C)日刊ゲンダイ
関東以外の私立医科大の収入構造

 関東以外の医科大学は付属病院が少ないため、大学としての総収入も少なめです。〈表〉に6つの医科大学の総収入と学生納付金(大学院等を含む)、医療収入をまとめました。

 金沢医科大学は総収入が300億円に満たず、経営規模が最小です。石川県は人口約116万人に過ぎませんが、金沢大学医学部があり、ほかにも多くの公立私立病院の大病院があるなど、実は病院激戦区です。その中で金沢医大病院は、病床稼働率は約75%、外来患者は1日約1200人を確保しています。

 愛知医科大学の総収入は約413億円、関東の医科大学と比べると、やはりかなり小粒です。愛知県にはほかに名古屋大学、名古屋市立大学、藤田保健衛生大学の付属病院をはじめとする大病院がひしめいています。愛知医大病院は、病床稼働率が約85%、外来は1日2500人以上と、大健闘しています。

■学費が西日本最安値の関西医科大学は医療収入が多い

 しかし両校とも、付属病院の総病床数が少ないため、総収入にはおのずと限界があります。そのためか、6年間の学費は、関東の医科大学と比べて高めに設定されています。また学生納付金(授業料等)が総収入に占める割合は、金沢医科大学で約18%、愛知医科大学も約13%となっています。

 大阪医科薬科大学の総収入は約741億円となっていますが、これには少し説明が必要です。本業である教育活動(医療を含む)の収入は約465億円ですが、合併(2016年度に大阪医科大学と大阪薬科大学が合併)に伴う特別収入として約274億円が計上されているのです。実際、17年度の収入予算額は、約470億円となっています。

 関西医科大学は医学部のみの単科大学。付属病院が3つあり、病床数が多めで、医療収入が好調です。6年間の学費は西日本では最安の約2800万円。兵庫医科大学は病床数が少ない分、学費が高めになっています。

 川崎医科大学は、学校法人川崎学園に属しています。コメディカル育成のための川崎医療福祉大学、川崎医療短期大学と、付属高校や専門学校で構成されており、法人全体の決算書のみを公開しています。学生・生徒が多いため、学生納付金が全体に占める割合は約18%で、医療収入の割合は約56%と低めです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。