専門医に聞いた 血糖値が気になる人の酒の飲み方○と×

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 お酒がおいしい季節がやってきた。仕事帰りに「秋の実りを肴に赤ちょうちんで一杯」を楽しみにしている人も多いはず。そこで気をつけたいのが血糖値。血糖値が高い人はお酒の糖分や食欲増進作用により急激に血糖値が上がり、本格的に糖尿病を発症したり、血管を傷つけ、動脈硬化を進める可能性があるといわれているからだ。とはいえ、お酒で日頃のストレスを発散することも健康には大切なこと。お酒とはどのように付き合うべきか? 糖尿病専門医で「AGE牧田クリニック」(東京・銀座)の牧田善二院長に聞いた。

「日本ではいまだにお酒や高カロリー食は血糖を高くすると誤解されていますが、血糖を上げるのは糖質。お酒を飲んでもそれ自体で血糖値が上がることはありません。お酒を飲める人は積極的に飲んだ方がいいでしょう。海外ではお酒を飲むと血糖が下がることは常識です。米国糖尿病学会では糖尿病患者がお酒を飲むと“低血糖に注意しなさい”と言われます」

 確かにビールや日本酒は比較的糖質が多く、飲めば血糖値が上がるが、焼酎、ジン、ウオッカなどの蒸留酒は血糖値が上がらない。ワインには糖質が含まれているが、飲めば逆に血糖値が下がることが知られている。

 実際、190人の2型糖尿病患者を毎晩ワインを飲む群とノンアルコール群とに分けて、早朝空腹時の血糖値を調べた欧米の研究では、前者の方が22ミリグラム/デシリットル低かったことが報告されている。

「私の患者さんに24時間血糖測定器で食事やお酒を飲んだ後、どのくらい血糖値が上がったかを調べている方が大勢おられますが、お酒を飲んだからといって極端に血糖値が上がった人はおりません。とはいえ、乾杯で最初にビールを飲んだにしても、2杯目からは焼酎やワインにするといいでしょう。また、お酒と同じ量の水を飲むのがお勧めです。血液中のアルコール濃度も薄まり、ひどく酔っぱらうこともありません」

■2杯目からはワインや焼酎に

 危険なのはジュースなどで割ったサワーやカクテル。梅酒も糖質が多いので避けた方が無難だ。

「つまみはチーズやソーセージ、ハム、おでんなどを選び、揚げ物やおかきなどは極力取らないこと。揚げ物やおかきは炭水化物の塊で揚げ物の衣の小麦粉が血糖値を上げる一因です。お勧めなのは酢の物です。酢を使った食べ物は胃から腸への移動をゆっくりにするため、食後の血糖上昇のピークを低くすることができます。また、血液中のブドウ糖を筋肉へため込むことを促進します」

 お酒を飲む日の朝食や昼食を軽く済ませる人がいるが、やめた方がいい。血糖値スパイクにより、血管を傷つけるリスクが高くなる。

「食べていなかった分、ここぞとばかり飲み食いすると、糖分を一気に大量に吸収することになり、食後血糖値が短時間で急上昇してしまいます。その後、正常値に戻りますが、この血糖値の急上昇・急降下の繰り返しが、血管の壁の細胞から活性酸素を大量に発生させて血管の内壁を傷つけるのです。それを修復するために集まった免疫細胞が壁の内側に潜り込んで、血管を硬く、狭くすることになります」

 その結果、全身に酸素や栄養を運ぶパイプの役割をする動脈が細くなる。さらには血流をスムーズに流れるよう手助けをする動脈の弾力性が失われ、最悪、脳梗塞や心筋梗塞などを起こすことになる。

「お酒を飲むときはひと所に座って飲むのもよくありません。お酌をしたり、店を替えるなどして胃腸に集まった血液を分散させることが血糖値の上昇を抑えることにつながります」

 お酒を飲んだ後、締めにお茶漬けやラーメンなどを食べたくなるが、これは絶対やめるべきだ。

「必ず血糖値が急上昇します。どうしても腹を満たしたければ、茶碗半分のご飯をサバの水煮の缶詰と一緒に時間をかけて食べるのも手かもしれません。サバの油にはインスリンの作用を助ける働きがあるうえ、即効性があるので血糖値の上昇を抑えてくれる可能性があります」

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