皮膚を科学する

人間は“全身金粉”で長時間過ごすと呼吸困難で死ぬはウソ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男にしてみれば、女性が毎日顔に塗りたくっている化粧は、「皮膚呼吸」の妨げになって体に悪いのではないのかと思ってしまう。本当のところはどうなのか。「新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター」(千葉県)の瀧川恵美センター長に聞いた。

「そもそも人間は皮膚呼吸をしているというのは間違いです。皮膚呼吸をするのは、ミミズやヒルなど肺を持たない生物。カエルは肺と皮膚の両方で呼吸をしています。皮膚呼吸をする生物は皮膚が薄く、その薄い皮膚を守るために体の表面が常に濡れていないと生きられません」

 皮膚が厚く、体の大きい人間は、必要な酸素はほとんど肺呼吸で取り入れているという。皮膚は空気に触れているので、皮膚のごく表面の細胞は皮膚呼吸をすることは可能だが、取り入れられる酸素量は肺呼吸と比べるとわずか0.6%。それが妨げられても、肺が取り入れた酸素を血液が皮膚へ送っているので何ら問題はないという。

■ヒトは皮膚呼吸しない

 昔から「全身に金粉を塗ると皮膚呼吸できないので死ぬ」という噂があるが、これはウソ。一説では映画007シリーズ「ゴールドフィンガー」で、女性が金粉を全身に塗られて殺されたことが起源とも言われている。では、ヤケドなどで「皮膚の3分の1以上を失うと生きていけない」というのはなぜなのか。

「皮膚には刺激や有害物質、病原体などから体を守るバリアーの役割があります。また、汗をかいたり毛穴を閉じたりして、体温調節をしています。これらの機能を失うことで、感染症や体温調節ができなくなったりすることにより危険な状態になるのです。皮膚呼吸ができないからではありません」

 それに顔の皮膚は全身からすれば、ごく一部。逆に化粧品には紫外線をカットする成分が入っているので、日常的に化粧することは皮膚がんなどの発生を防ぐことにつながるという。

「ただ、化粧もスキンケアをきちんとしないと問題が起こります。化粧を塗りっぱなしにしておくと、毛穴に汚れが詰まって吹き出物やあせもなどの原因になります。それに乾燥して肌に悪い。ですから女性は毎晩、洗顔して化粧水や乳液などを使って丹念にケアをしているのです」

 男性も季節問わず、日焼け止めくらいは顔に塗った方がいいという。紫外線のダメージを日常的に受けていると、皮膚の防御反応で厚く硬くなり、肌がゴワゴワした“老け顔”になる。知識として覚えておこう。

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