皮膚を科学する

皮膚科に聞いた “寒い・怖い”でなぜ「鳥肌」は現れる?

これから寒い季節に…
これから寒い季節に…(C)日刊ゲンダイ

「寒い」「怖い」「感動した」ときなどに皮膚に現れる「鳥肌」。何のために、鳥の毛をむしったようなブツブツな肌になるのか。「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」(東京)の藤本智子院長が言う。

「寒いと鳥肌が立つのは、人間が動物だったころの名残です。体を膨らませているスズメを見たことがあると思います。動物は寒いと毛を立てて、ダウンジャケットのように空気の層をつくって体からの放熱を防ぎます。しかし、人間は全身を毛で覆われていないため、皮膚の表面を流れる血管を収縮させ、血流を減らして体の放熱を抑えるように発達したのです」

 つまり、鳥肌とは体毛を立たせている状態。実は、皮膚の毛は普段は少し斜めに寝て生えている。その毛を立たせるのは、1本の毛根に1~2個ついている「立毛筋(りつもうきん)」と呼ばれる微小の筋肉だ。鼻毛、眉毛、まつ毛、顔の産毛の一部を除いては、ほとんどの体毛についているとされる。寒いと立毛筋が収縮して、毛穴の周囲の皮膚が毛穴をふさぐように盛り上がる。これがブツブツの正体だ。

「立毛筋は自分の意思で動かすことができない不随意筋(ふずいいきん)で、アドレナリン作動性の交感神経に支配されています。寒いと交感神経が活発に働きはじめ、アドレナリンの分泌が促進されて立毛筋が収縮するのです。皮膚表面の血管を収縮させるのも、同じように交感神経の働きによるものです」

 ちなみに立毛筋には副交感神経はない。だから心身がリラックスした状態で、副交感神経が優位のときに鳥肌が立つことは、まずあり得ないのだ。

「恐怖」や「感動」などの感情の高ぶりで鳥肌が立つのも同じメカニズム(交感神経の働き)。動物を観察して分かりやすいのは、犬や猫が危機に直面したときなどに「毛を逆立てる」現象だ。こういうときには「興奮性神経伝達物質」のアドレナリンがバンバン分泌されているという。

「寒いと立毛筋が収縮するということには、筋肉を動かして熱をつくり出す作用もあります。冬の脱衣所など急に寒いところに出ると、体が“ブルッ”と震えますが、これも体が熱をつくり出そうとすることで起こります。そして、極度に寒くなると体がガタガタと震えだします。この自分ではコントロールできない筋肉の動きも、熱をつくり出すために起こる体の防御反応なのです」

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