これで「物忘れ」は怖くない

「人の名前が出てこない」のはなぜ? 米山公啓氏に聞いた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 年齢とともに増える物忘れ。その原因は、海馬にある神経細胞の機能低下にあった。「まず人の名前が出てこなくなった」という人は多いが、なぜだろう? 米山医院・米山公啓院長(神経内科医)に聞いた。

「固有名詞は意味のない言葉だから覚えにくいし、忘れても比較的支障がありません。だから物忘れが始まると、固有名詞から出てこなくなるのです」

 確かに「お医者さん」に行く時、「〇〇先生」という固有名詞を忘れていても受診できる。支障がないから、優先的に覚えていられないわけだ。

「2、3回会っただけの人の名前なんて忘れるのが当たり前で、気にする必要はありません。ただ、家族や親友の名前が出てこないのは問題です」

 優先順位の高い記憶が出てこないということは、脳の神経細胞の劣化がかなり進行している証拠である。こうなると認知症の治療が必要だ。

 英国のある心理学者によると、他人を認識する段階は3つある。

 たとえば同級生にばったり会った時は、①顔を見て知っている人だと認識する②その人にまつわるエピソード(同級生だった)を思い出す③名前を思い出す。

 この順番で認識するが、②、③までたどり着けない場合もある。逆に、「名前を覚えているのに顔が思い出せない」はあり得ない。人は、人の名前を忘れても、顔を忘れることはめったにないのだ。

「人間は密集して生活する生き物だから、嗅覚よりも視覚で仲間を識別する能力が必要とされました。だから進化の過程で、顔を記憶する神経細胞が異様に発達したのです」

 親しい人の顔を忘れるのは、すべてを忘れた時だと考えていいだろう。

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