ジョギングも一因 かかと痛“難治例”の最新治療事情

肥満もリスク要因だ
肥満もリスク要因だ(C)日刊ゲンダイ

 歩くとかかとが痛い。起床時の第一歩が特に痛い。そう感じたことがあれば、「足底腱膜炎」の可能性がある。船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センタースポーツ下肢部門副部長・高橋謙二医師に最新治療を聞いた。

 かかとから足の5本の指にそれぞれつながる腱膜が足底腱膜。ジョギングをはじめとするスポーツ、立ち仕事、歩き仕事(営業)、肥満、加齢がリスク要因だ。

 リスク要因があると足底腱膜に過度の圧がかかりやすく、わずかな断裂や炎症が起こる。通常、放っておいても修復することが多いが、損傷・修復を繰り返すうちに腱膜が厚く硬く瘢痕化し、その中に神経線維が入り込む。

「本来は傷の修復とともに消失する神経線維がそのまま残ることで、圧がかかるたびに激しい痛みを感じます。さらに痛みを伝える神経伝達物質が局所に集まり、正常な組織修復を妨げます」

 足底腱膜炎の治療は、まず6カ月を目安にした保存治療。具体的にはストレッチ、足底の筋力訓練、かかとへの圧を和らげるインソールの使用など。鎮痛剤の注射や湿布を用いることもある。

「ところが強い痛みを感じて病院を受診してきた患者さんでは、足底腱膜の瘢痕化が進んだ難治例が少なくありません。そうなると保存治療では痛みが消えにくい。MRIの結果を見て、次の段階の治療である『体外衝撃波』を検討します」

 体外衝撃波はドイツ発の治療で、足底腱膜炎に対し国内で行われるようになったのは2008年以降。腱膜が痛む箇所へ衝撃波を当て、厚く硬くなった部分を改善する。神経伝達物質の減少や正常細胞の刺激で、滞っていた損傷部分の修復が再開される。

 1回に当てるのは2000~3000発。1カ月に1回、3カ月間に計3回(1クール)。最初は弱く、徐々に強く当てていく。保険適用だ。

■8割に有効

「『麻酔をかけて強く当てた方がいい』『低く数回当てる方がいい』など国によってやり方は違います。経験上、私は強く何回も当てればいい、とは考えていません」

 効果が出てくるのは、ゆっくりだ。早い人で1カ月後、平均的には2カ月後あたりから効果を実感する。1クール実施後、1年後に8割くらいが「痛みが半減以下になった」と回答する。なお、治療中はかかとに圧がよりかかるスポーツはしないのが望ましい。

「痛みをゼロにしたいと『さらに1クール』を望む患者さんもいますが、たいていは最初の3回で満足されます」

 ただし、足底腱膜炎に別の疾患を併発していれば、効果を得にくい。足底腱膜炎以外の疾患によっては、かえって痛みが悪化することもある。

「診断が重要。MRIでは異常が見られない場合もありますが、足底腱膜炎の特徴として、かかとのある部分を押すと飛び上がるほど痛みがあります。痛みがあまりないようなら、別の疾患が疑われます」

 足底腱膜炎は整形外科領域であるが、一般の整形外科では診断はされるものの「治療法はない」と言われるケースもある。足の外科を専門とする整形外科医などの方が体外衝撃波治療も含めて確実に治療法を提案してくれるだろう。

■体外衝撃波治療

 体外衝撃波治療は足底腱膜炎だけのものではない。整形外科領域では肩、膝などの治療にも用いられる。よく知られるのは尿路結石の破砕治療だ。足底腱膜炎の治療では、尿路結石の出力の3~4割程度の照射になる。

■難治化する前に

 難治例に至る前ならば、足底腱膜炎は自分で対処できる。「かかとに負担がかかりにくいインソールを用いる」「ステップでの爪先立ち、かかと上げ」「足指でタオルを手繰り寄せる」「足指でゴルフボールをつまむ」などが有効だ。足底腱膜炎のリスク要因を抱えている人には、予防策にもなる。

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