独白 愉快な“病人”たち

えのきどいちろうさん 続発性の脳腫瘍と「一生付き合っていく」

麻酔から覚めて家族の顔が見えたとき「生きてるんだ」と思った/(C)日刊ゲンダイ

■手術から5年後に再びガンマナイフ治療を受けた

 その年の11月に入院を決めたのは、出版業界の年末進行を逃れるため。2カ月分の仕事がサボれるからです(笑い)。当時、雑誌のコラムやラジオなどレギュラーが何本もあったのですが、お休みをするにあたって事情を説明すると、みんなとても優しくしてくれるんです。脳腫瘍という病名のインパクトがなせる業でしょう。この調子で女の子を口説いたら誰でもOKしてくれるかも……と思ったくらい(笑い)。

 手術は、開頭手術ではなく、口の中の上唇の付け根を切って、内側から腫瘍を取る経鼻的手術でした。外傷もなく、口の中は再生が早いとのこと。入院は1カ月と言われましたが、ボクは19日で退院しました。

「命に別条はない」と言われたので不安は少なかったのですが、全身麻酔でしたから、麻酔から覚めて母親やカミサンの顔が見えたとき、「生きてるんだ」と思ったのは覚えています。翌日から、もう視界が良くなったことも実感しました。ダメージを受けた体が元に戻ろうとする力を感じられたのもいい経験です。ゲームでたとえると、HPが毎日上がる感じ(笑い)。

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