役に立つオモシロ医学論文

英医学誌に掲載 幹線道路沿いに住むと認知症になりやすい?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 交通量が多い幹線道路の近隣に住んでいる人は、そうでない人に比べて自動車の排ガスや交通騒音の影響を受けやすいといえます。

 過去には大気汚染や騒音などが認知機能に悪影響を及ぼすのではないかという研究報告もされているようです。そんな中、世界的に有名な英国の医学誌「ランセット」2017年2月号に、居住地から幹線道路までの距離と、認知症発症リスクの関連を検討した観察研究論文が掲載されました。

 この研究では、カナダのオンタリオ州という場所に5年以上在住しており、認知症などの神経変性疾患を発症していない約660万人が解析対象となりました。郵便番号に基づいて、幹線道路と居住地までの距離を特定し、認知症発症リスクとの関連性を検討しています。

 なお、結果に影響を与えうる、年齢や性別、所得、糖尿病の有無などの因子で補正して解析しています。

 この研究において、01年から12年までの間に、認知症を発症したのは24万3611人でした。解析の結果、居住地から幹線道路までの距離が300メートル以上と比較して、50メートル未満では7%、50~100メートルでは4%、101~200メートルでは2%と、わずかではありますが統計学的にも有意に認知症発症リスクが増加しました。特に大都市部に在住している人や、同じ場所に住み続けている人でリスクが高いという結果になっています。

 認知症発症リスクの増加が、交通騒音や車の排ガスなどの大気汚染によるものなのかについては、この研究から結論できません。とはいえ、居住地が幹線道路に近いほど認知症のリスクが上昇しており、こうした居住環境が健康に対して何らかの影響を与えている可能性は高いといえるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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