数字が語る医療の真実

「根拠に基づく医療」はかっけ論争の反省抜きには語れない

 長々と取り上げてきたかっけの論争は、日本の医学の歴史を語る上で最も重要な事件であるだけでなく、医療自体の基盤にある最も根本的な考え方そのものを問う点において、重大な教訓をはらんでいます。

 その教訓は何も難しいことではなく、古くからあることわざで既に述べられています。「論より証拠」ということです。

「証拠」というと誤解を生じるかもしれません。森林太郎らの東大グループは、高木らに対して「洋食や麦飯がかっけを予防する科学的証拠がない」と言って反論し続けたのは、ここでは「論理がわかっていないという」批判でした。そのため、ここでは「論理の証拠より事実の証拠」といったほうが正確でしょう。

 この森林太郎らの論理の証拠でなく、高木らのような事実での証拠を重視する流れは、医療全体でも長く軽視されており、それが本当に評価されるべきものとして強調され始めたのは、実は、1990年以降のごく最近にすぎません。この流れこそが「EBM=Evidence―Based Medicine(根拠に基づく医療)」です。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。

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