がんと向き合い生きていく

骨肉腫の多くは手術と化学療法で治癒するようになった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 手術から数日後、M君の病室の壁に飾られていたサッカーのユニホームと試合中の写真は外されていました。

 肺転移に対しての化学療法を相談された私は、抗がん剤の「メトトレキサート(MTX)大量療法」を中心とした治療を勧めました。普段、白血病や悪性リンパ腫に使う100倍以上の量を投与しますが、MTXは腎臓から尿へ良く排出され、ロイコボリンという中和剤を使うとほとんど副作用はありませんでした。現在も、MTX大量療法は治療の中心です。

 化学療法によって、M君の肺の転移は一時縮小しましたが、次の治療を開始する前には以前よりも増大することを繰り返しました。転移は次第に肺全体を占めるようになり、1年後には呼吸困難となって残念ながら亡くなりました。

 骨肉腫は患者の約70%は40歳以下で、10代の青少年に最も多く見られます。出来る場所は四肢、特に膝の周囲など下肢に多く、主な症状は局所の疼痛・腫脹です。治療は一般整形外科ではなく、より専門的に骨軟部腫瘍を診療している整形外科で行われます。特に骨軟部腫瘍科を標榜している病院もあります。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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