手術から数日後、M君の病室の壁に飾られていたサッカーのユニホームと試合中の写真は外されていました。
肺転移に対しての化学療法を相談された私は、抗がん剤の「メトトレキサート(MTX)大量療法」を中心とした治療を勧めました。普段、白血病や悪性リンパ腫に使う100倍以上の量を投与しますが、MTXは腎臓から尿へ良く排出され、ロイコボリンという中和剤を使うとほとんど副作用はありませんでした。現在も、MTX大量療法は治療の中心です。
化学療法によって、M君の肺の転移は一時縮小しましたが、次の治療を開始する前には以前よりも増大することを繰り返しました。転移は次第に肺全体を占めるようになり、1年後には呼吸困難となって残念ながら亡くなりました。
骨肉腫は患者の約70%は40歳以下で、10代の青少年に最も多く見られます。出来る場所は四肢、特に膝の周囲など下肢に多く、主な症状は局所の疼痛・腫脹です。治療は一般整形外科ではなく、より専門的に骨軟部腫瘍を診療している整形外科で行われます。特に骨軟部腫瘍科を標榜している病院もあります。
がんと向き合い生きていく