クスリと正しく付き合う

必要のない薬を飲み続けると重病を引き起こす危険も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 薬の「適正使用」とは、「薬を必要な時に必要な量を使う(用法・用量を守る)。必要なければ使わない」ということです。つまり、使うべき時(状態)に使って、そうでなくなったら(症状が改善したり、悪化するなど)やめるのが「適正」なのです。

 ただ、必要ない、もしくは必要なくなった場合でも薬を飲みたがる患者さんがいるのも事実です。そういった方は「なぜ飲んではいけないのか?」と思うかもしれません。その理由として、①副作用のリスクがある、②医療費がかかる、ということが挙げられます。

 今回は①についてお話ししましょう。何かしらの効果がある薬には、何かしらの副作用があるのは当然で、「副作用のない薬はない」と言い切っても過言ではありません(症状として表れるか表れないかは別問題です)。中には、ひどい炎症やショックで死に至るような副作用もあります。

 また、薬剤性腎障害や薬剤性肝障害など、臓器にダメージを与える場合もあります。

 死まで至らなくても、腎障害で慢性腎臓病(CKD)になって悪化した場合には、生涯、人工透析を受けることになり、著しくQOL(生活の質)を低下させるケースもあるのです。

 薬剤性腎障害を引き起こす可能性がある薬は意外と身近にあります。

 抗がん剤を除くと、「解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬=NSAIDs)」と「抗生剤」が上位に挙がります。これらの薬は風邪をひいた時によく処方されますので、誰しも一度くらいは飲んだことがあるでしょう。過剰に心配する必要はありませんが、身近であるからこそ「適正使用」が重要になります。

 抗生剤の処方は短期間の場合が多いですが、NSAIDsは鎮痛薬でもありますので、慢性腰痛などでも処方され、漫然と飲み続けている患者さんは要注意です。定期的に血液検査を受けて腎機能を確認し、痛みが長引く場合は、腎障害の出ない鎮痛薬への変更も考えた方がよいかもしれません。身近な分、副作用を軽視されがちな鎮痛薬の使用には、十分に気をつけましょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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