公費による中学生のピロリ菌検診・除菌になぜ慎重論が?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■理想は「早期除菌」だが…

 何度も除菌治療を行えば、薬に対して耐性菌ができる。中学生が成人になった時に不利益を被る可能性がある。

「高校生になれば成人として保険適用の対象になります。なにも保険適用外の中学生のうちに除菌を行わなくてもよいのでは」

「日本ヘリコバクター学会」の意見はどうか? 学会理事長で富山大学大学院消化器造血器腫瘍制御内科学講座・杉山敏郎教授は「『胃がん予防には早期除菌』という点では理事全員が一致していますが、中学生除菌には理事の多数は『慎重派』」と言う。前述の通り中学生までは小児科領域であり、小児科医が「反対」している状況では、無理に中学生へのピロリ菌検診・除菌を進めることが困難だからだ。

 なお、日本のエビデンスではピロリ菌は12歳まで感染リスクがあり、12歳以下で除菌しても再感染する可能性がある。つまり、あまりに早期の除菌では再感染が起こり、胃がん予防に結びつかない可能性もある。早期除菌が胃がん予防に有効といっても、中学3年生と高校1年生の除菌で胃がん予防効果に大きな差が出るとも考えにくい。

「個人的な意見として、ピロリ菌の検診・除菌治療の低年齢化を進めるにしても、内科の領域になる高校生以上が現実的でしょう」(杉山教授)

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