独白 愉快な“病人”たち

ガガと同じ線維筋痛症 如月まぁやさん“見えない痛み”語る

線維筋痛症の痛みは「いつも血管にガラスの破片が流れているような感じ」
線維筋痛症の痛みは「いつも血管にガラスの破片が流れているような感じ」/(C)日刊ゲンダイ

 顔面以外、全部痛いです。形容しがたいですが、いつも血管にガラスの破片が流れているような感じです。痛みが引いているときでも正座で足がしびれているような感じが全身にあって、酷い時は体の中からカチ割られるような痛みがあります。

 最近、レディー・ガガさんが「線維筋痛症」を公表したニュースが話題になり、同じ病気を持つ私にテレビ出演の依頼がありました。お受けしたものの、正直なところ「私、大丈夫かな?」と不安でした。こうして取材を受けるときもそうですけど、遊びでもなんでも、出かける1週間前から安静にして体調を整えるのが当たり前で、それだけやっても「雨」には勝てなくてドタキャンしてしまうこともあるからです。痛みが強くなってくると数日後に雨が降ります。気圧の関係でしょうかね。雨の予報はよく当たりますよ(笑い)。

 テレビ出演は急なお話だった上に、2日連続でした。“頑張るスイッチ”を入れっぱなしでなんとか乗り切りましたが、その後、1~2週間は痛みに苦しみました。

■高校2年でほぼ寝たきりに……

「線維筋痛症」と診断されたのは、高校2年の1月でした。いくつもの病院を転々とした末です。初めに異変を感じたのは、高校1年の3月。ピアノの定期試験の練習中です。急に左の手首に痛みが出て、痙攣のような感じで勝手に手首が跳ね上がるような症状が出ました。以前に腱鞘炎をやっていたので「また腱鞘炎だ」と思い、接骨院で整体と電気治療をしましたが、以前は1週間で治った痛みが2カ月しても治りません。それどころか、手首から腕、腕から肩、右手も背中も……と痛みが広がってきたんです。

 高校に進学する傍ら、あちこちの病院に行きました。「ヘルニア」や「胸部出口症候群」など、さまざまな病名を告げられましたが、言われた病気を調べてみても、どこか違うんです。納得できないまま1年間、病院を転々。高校2年になるとほぼ寝たきりになりました。その頃、とある病院で「線維筋痛症専門の診断医のいる病院がある」と聞き、やっと納得できる病気と出合えたのです。線維筋痛症は、調べれば調べるほど自分の症状と一致していました。

 この病気は、疲れやストレス、光や音の刺激でも神経が「痛み」ととらえてしまう原因不明の疾患です。一般的なレントゲン、CT、MRI、筋電図、炎症反応、血液など、あらゆる検査で異常は出ません。確立された検査方法はまだなく、医療関係者の間でもあまり認知されていないので「そんな病気はない」と言う医師もいるんです。

 専門の診断医によって病名には納得できたものの、治療は投薬と近赤外線で体を温めることぐらいしかありません。あとは「筋力が落ちないように適度な運動をして」と言われただけ……。できるのはお散歩ぐらいですけどね(笑い)。

■「内部障害」のマークを着けていても、席を譲ってくれる人はほとんどいない

 病歴7年になります。今は月1回ペースで東京駅近くの「東京リウマチ・ペインクリニック」に通院して、1日に27錠の薬を飲んでいます。線維筋痛症の痛みに対する薬と、それに伴う副作用に対する薬です。でも、正直にいうと、あまり効き目はありません。それでも、体調をコントロールすれば外に出られるくらいにはなったので、寝たきりよりはましになりました。

 シンガー・ソングライターとしての活動はささやかなものです。1年12カ月中の10カ月はつらくて動けないから……。夏の日差し、冬の寒さはもちろん、季節の変わり目や梅雨、長雨の時季などはほとんど活動できません。痛みがひどいと死にたくなるくらいですが、そういうときはまったく動けないから自殺もできません。といっても、音楽活動やブログを始めてからは、私を支えにして生きている人を裏切ることになると思うから、思いとどまっています。

 音楽活動を始めた頃は「病気を売り物にしている」といった批判も受けました。でも、そう言われることは覚悟していましたし、心の傷は考え方を変えればなんとか治せます。だから、批判を避けることより「誰かを救える自分でありたい」と思いました。

 私に限らず、外見からはわからないけれど、重大な病気を抱えている人はたくさんいます。「内部障害」のマークを着けていても、電車で席を譲ってくれる人はほとんどいません。自分と違う人を哀れむのではなく、興味を持って欲しいのです。ガガさんのニュースで病気の認知度が上がり、医療の研究が進み、政治的な対策にもつながったらいいなと期待しています。

▽きさらぎ・まぁや 1993年、東京都生まれ。5歳からピアノを始め、18歳で音楽専門学校に入学。作曲を専攻し、卒業制作でCDアルバム「FantasiaMusical」を仲間と共に制作。その中の1曲が「Pain」として配信されている。17歳から患う「線維筋痛症」の啓蒙のため、音楽活動や講演活動を行っている。

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